「夫が亡くなり、相続人は私と、障害のある長男と、まだ中学生の次男です。相続税の計算で何か配慮してもらえる仕組みはありますか」。そんなご質問をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。相続税には、相続人が18歳未満の場合の「未成年者控除」と、85歳未満の障害者の場合の「障害者控除」という、税額そのものから差し引ける制度が用意されています。今回は、それぞれの計算方法と、見落としやすい「控除しきれない分」の扱いを整理します。
この記事の結論
- 未成年者控除は「(18歳−相続開始時の年齢)×10万円」、障害者控除は「(85歳−相続開始時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)」で計算するとされています。年数に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げます。
- どちらも、相続税の基礎控除のように「財産の額」から引くのではなく、算出された「相続税額」から直接差し引く税額控除です。
- 本人の相続税額から引ききれない分は、その方の扶養義務者(親・兄弟姉妹など)の相続税額から差し引くことができるとされています。
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未成年者控除:18歳になるまでの年数×10万円
未成年者控除(相続税法19条の3)は、相続や遺贈で財産を取得した法定相続人が、相続開始の時点で18歳未満である場合に使える制度です。成年年齢の引き下げにより、2022年(令和4年)4月1日以後の相続では、基準が20歳から18歳に変わっています。原則として、財産を取得した時に日本国内に住所があることも要件とされています。
控除額は、18歳に達するまでの年数1年につき10万円です。たとえば、相続開始時に10歳3か月の子であれば、18歳までは7年9か月となり、端数を切り上げた8年×10万円=80万円が、その子の相続税額から差し引かれます。法定相続人であることが前提ですので、孫が代襲相続人として相続する場合などは対象になり得ますが、相続人ではない孫が遺贈を受けただけの場合は対象外と考えられます。
障害者控除:85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)
障害者控除(相続税法19条の4)は、相続や遺贈で財産を取得した法定相続人が、相続開始時に85歳未満の障害者である場合に使えます。こちらも、日本国内に住所があることなどが要件です。控除額は85歳に達するまでの年数1年につき10万円で、身体障害者手帳1級・2級の方など「特別障害者」に当たる場合は1年につき20万円になります。
国税庁の説明では、たとえば相続開始時に45歳7か月の特別障害者であれば、85歳までの39年5か月を40年に切り上げ、20万円×40年=800万円を控除できるとされています。障害者手帳をお持ちでない方でも、市区町村から障害者に準ずる旨の認定を受けている場合などに対象となることがあるため、該当しそうな場合は手帳や認定書類の有無を確認しておきましょう。なお、未成年で障害のある方は、未成年者控除と障害者控除の両方を受けられるとされています。
引ききれない分は扶養義務者から差し引ける
お子さまが受け取る財産が少ないと、本人の相続税額が控除額より小さくなり、控除を使い切れないことがあります。このような場合、引ききれなかった金額は、その方の扶養義務者が負担する相続税額から差し引くことができるとされています。扶養義務者には、配偶者、直系血族(父母など)、兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の方が含まれます。冒頭の例でいえば、次男の未成年者控除の残りを母の相続税額から差し引く、といった使い方が考えられます。
注意したいのは、過去の相続ですでに未成年者控除や障害者控除を受けている場合です。2回目以降の相続では、前回使った控除額を差し引いた残りの範囲でしか控除できないとされています。また、これらの控除は相続税の申告書(第6表)で計算するものですので、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかを、まず確認することが出発点になります。
もう一つ見落としやすいのが、遺産分割協議そのものの進め方です。未成年の子と親権者である親がともに相続人になる場合は、利益相反にあたるため、家庭裁判所で子の特別代理人を選任してもらう必要があるとされています。また、障害により判断能力が十分でない相続人がいる場合は、成年後見人などの選任が必要になることもあります。税金の計算と並行して、協議の段取りも早めに確認しておきましょう。
チェックリスト
- ☐ 相続人それぞれの相続開始日時点の年齢を、生年月日から月単位で確認した。
- ☐ 障害者手帳の等級(特別障害者に当たるか)や、市区町村の認定書類の有無を把握している。
- ☐ 遺産総額が基礎控除額を超えるかどうかを試算した。
- ☐ 控除しきれない分を、どの扶養義務者の税額から差し引くかを家族で話し合った。
- ☐ 過去の相続で未成年者控除・障害者控除を受けたことがあるか、当時の申告書を探した。
- ☐ 未成年の子と親権者がともに相続人になる場合の特別代理人選任の要否を確認している。
Q. 控除を使うと相続税がゼロになる場合でも、申告は必要ですか?
A. 未成年者控除や障害者控除は、算出された相続税額から差し引く仕組みです。遺産総額が基礎控除額を超えている場合は、これらの控除で納める税額がゼロになるときでも、申告書を作成して控除を適用する形になると考えられます。個別のケースについては税理士にご確認ください。
Q. 相続放棄をした未成年の子でも、未成年者控除は使えますか?
A. 法定相続人かどうかは、相続放棄がなかったものとして判断するとされています。そのため、相続放棄をした子が生命保険金などを遺贈により取得した場合には、控除の対象になり得ると考えられます。適用の可否は財産の取得のしかたによって異なりますので、申告の際に専門家へご確認ください。
Q. 障害者控除を受けるには、どのような書類が必要ですか?
A. 一般的には、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、療育手帳などの写し、または市区町村の認定を受けたことが分かる書類を申告書に添付する形とされています。柏市にお住まいの方で手帳の等級や認定の状況が分からない場合は、市の障害福祉の担当窓口に確認するとスムーズです。
ワンポイントアドバイス: 未成年者控除と障害者控除は、「誰がどれだけ相続するか」によって効果が変わります。たとえば、控除額の大きいお子さまに一定の財産を取得してもらうと、家族全体の相続税が抑えられる場合があります。一方で、お子さまの将来の生活資金の管理方法も考える必要があるため、税金の試算と遺産分割の内容は切り離さずに、あわせて検討することをおすすめします。
まとめ
相続人に18歳未満のお子さまや、85歳未満の障害のある方がいる場合、相続税額から直接差し引ける未成年者控除・障害者控除を使える可能性があります。計算の基本は「基準の年齢までの年数×10万円(特別障害者は20万円)」で、引ききれない分は扶養義務者の税額から差し引けるとされています。あわせて、特別代理人や成年後見人の選任など遺産分割協議の段取りも必要になることがあるため、早めに全体の流れを確認しておきましょう。
戸籍の収集や遺産分割協議書の作成は、柏市の相談室にお任せください
行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成など、相続手続きに必要な書類の作成を承っております。なお、相続税の申告や控除額の計算は税理士、特別代理人・成年後見人の選任申立ては司法書士・弁護士、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
参考URL
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