遺言書に書いた『自宅の住所』では登記できないことも?|不動産は地番・家屋番号、預金は支店・口座番号で特定する書き方

遺言書で不動産を地番・家屋番号、預貯金を金融機関名・支店名・口座番号で特定する書き方を解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
不動産は登記事項証明書のとおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで書くと、相続手続きが滞りにくい

「自宅は妻に、〇〇銀行の預金は長男に」。遺言書を書こうと思ったとき、多くの方はまずこのような一文を思い浮かべるのではないでしょうか。こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。気持ちを形にすることはとても大切ですが、遺言書は、ご本人が亡くなった後に、法務局や金融機関といった第三者が読んで手続きをするための書類でもあります。どの財産のことなのかがはっきりしないと、せっかくの遺言があっても手続きが滞ってしまうおそれがあります。今回は、遺言書で財産を「特定」するための書き方を、不動産と預貯金を中心に整理します。

この記事の結論

  • ふだん使っている住所(住居表示)と、登記簿上の「地番」「家屋番号」は別の番号です。不動産は、登記事項証明書の記載をそのまま書き写すのが基本とされています。
  • 預貯金は、金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号まで書くと特定しやすくなります。口座の変更に備えて「〇〇銀行の預貯金すべて」とまとめる書き方もあります。
  • 財産の書き漏れに備えて「その他一切の財産」の条項を入れ、確実性を重視するなら公正証書遺言も選択肢になります。

遺言書の財産の書き方、柏市の相談室が一緒に確認します

「住所」と「地番」は別もの、不動産は登記事項証明書のとおりに書く

郵便物が届く「柏市〇〇町1丁目2番3号」といった住所は、住居表示と呼ばれる番号です。一方、法務局の登記簿では、土地は「地番」、建物は「家屋番号」という別の番号で管理されています。住居表示が実施されている地域では、この2つが一致しないことが多いとされています。

遺言書に住所だけを書いた場合でも、内容から財産を特定できると判断されれば手続きできることもあります。とはいえ、法務局から追加の説明や資料を求められたり、解釈をめぐって相続人の間で意見が分かれたりする可能性は残ります。そのような事態を避けるためには、次の項目を登記事項証明書から書き写しておくのが確実です。

  • 土地:所在、地番、地目、地積
  • 建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積

法務局が公表している自筆証書遺言の様式例でも、不動産はこのような形で記載し、不動産番号もあわせて書く例が示されています。登記事項証明書は全国どこの法務局でも取得でき、地番や家屋番号は、毎年届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)でも確認できます。

見落としやすい不動産、私道の持分や未登記の建物

自宅の土地と建物だけを書いたつもりでも、実はそれ以外にも不動産を持っている、ということは珍しくありません。特に見落としやすいのが、次のようなものです。

  • 自宅前の私道の共有持分
  • 物置や離れなど、登記されていない建物
  • 親から相続したまま名義を変えていない土地

こうした財産の存在は、市区町村で取得できる名寄帳(固定資産課税台帳)で確認できる場合があります。2026年2月に始まった所有不動産記録証明制度を使えば、本人名義の不動産を法務局で一覧にしてもらうことも可能です。書き漏れた財産には遺言の効力が及ばず、その部分だけ相続人全員で遺産分割協議が必要になるため、遺言を書く前に一度洗い出しておくと安心です。

預貯金・株式は「どこの・どの口座か」まで書く

預貯金は、金融機関名・支店名・預金の種類(普通・定期など)・口座番号まで書いておくと、金融機関の窓口で特定しやすくなるとされています。ゆうちょ銀行の場合は、記号・番号で特定するのが一般的です。株式や投資信託であれば、証券会社名・支店名・口座番号を書いておくとよいでしょう。

注意したいのは、遺言を書いた後に口座を解約したり、新しく作ったりするケースです。口座番号まで細かく書くと、変更があったときに遺言の内容と実際の口座がずれてしまいます。そこで、「〇〇銀行に預けている預貯金のすべて」のように金融機関単位でまとめて書く方法もよく使われます。また、残高は日々変わるため、「預金500万円を長男に」のように金額で書くと、亡くなった時点で残高が足りない場合などに解釈が問題になりやすい点にも気をつけましょう。

財産目録はパソコンで作成したり、通帳のコピーを添付したりすることも認められています(民法968条2項)。ただし、自筆証書遺言では、目録の毎葉(両面に記載がある場合は両面)への署名押印が必要とされているため、この点を忘れないようにしてください。

チェックリスト

  • ☐ 自宅の土地・建物の登記事項証明書を取得した。
  • ☐ 地番・家屋番号が、ふだんの住所と違うかどうかを確認した。
  • ☐ 私道の持分や未登記の建物がないか、名寄帳などで把握している。
  • ☐ 預貯金は、金融機関名・支店名・口座の種類と番号を書き出した。
  • ☐ 金額で指定せず、口座単位・金融機関単位で書く方法を検討した。
  • ☐ 「その他一切の財産」を誰に相続させるかの条項を入れている。

Q. 「自宅を妻に相続させる」とだけ書いた遺言書は無効ですか?

A. それだけで直ちに無効になるわけではないと考えられます。遺言者が自宅を1か所しか所有していないなど、内容から財産を特定できる場合は手続きできることもあります。ただし、追加の資料を求められたり、相続人の協力が必要になったりするおそれがあるため、これから書くのであれば、登記事項証明書のとおりに記載しておくことをおすすめします。

Q. 遺言書を書いた後に土地を分けたり(分筆)、まとめたり(合筆)したら?

A. 分筆・合筆をすると地番が変わるため、遺言書の記載と登記簿の内容が一致しなくなります。どの土地を指すのか解釈が必要になる場合もあるとされているため、地番が変わった際は遺言書の書き直しを検討するとよいでしょう。

Q. 法務局の遺言書保管制度を使えば、財産の書き方も確認してもらえますか?

A. 自筆証書遺言書保管制度で法務局が確認するのは、日付や署名など形式面が中心とされており、遺言の内容や財産の特定が十分かどうかまでは審査されないとされています。内容面の確認まで重視したい場合は、公証人が関与する公正証書遺言を選ぶか、専門家に原案を確認してもらう方法が考えられます。

ワンポイントアドバイス: 遺言書を書く前に、登記事項証明書・固定資産税の課税明細書・通帳を手元にそろえて「財産の一覧表」を作るところから始めると、書き漏れや書き間違いを防ぎやすくなります。不動産の売買・仲介の実務経験がある相談室として、登記簿の読み方や財産の洗い出しからお手伝いいたします。

まとめ

遺言書は、ご家族への想いを伝えると同時に、相続手続きで第三者が読む書類でもあります。不動産は住所ではなく登記事項証明書の地番・家屋番号のとおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで書くことで、手続きが滞りにくくなるとされています。書き漏れに備えた「その他一切の財産」の条項とあわせて、遺言書を書く前の財産の洗い出しから始めてみてください。

手続きで困らない遺言書づくり、まずは柏市の相談室にご相談ください

行政書士は、遺言書の原案作成のサポート、財産目録の作成、公正証書遺言の作成に向けた公証役場との調整、証人のご手配などを承っております。なお、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の試算・申告は税理士、遺言をめぐる紛争の代理は弁護士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

参考URL

関連記事

  • 遺言書に「財産の記載漏れ」があったら?|「その他一切の財産」条項の重要性
  • 遺言書の財産目録はパソコンで作ってもいい?|自筆証書遺言の方式緩和と見落としやすい署名押印のルール
  • 亡くなった親の不動産、全部把握できていますか?|所有不動産記録証明制度(2026年2月開始)の使い方と名寄帳との違い
  • 公正証書遺言、何から始めればいい?|作成の流れ・必要書類と柏公証役場での当日の手続き

コメント