「長男に多く財産を残す遺言を作りたいが、他の子どもたちに角が立たないか心配だ」というご相談を受けることがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。こうした場合に役立つのが、遺言書の最後に添える「付言事項」です。
この記事の結論
- 付言事項とは、遺言書の本体(法的効力のある部分)とは別に添える、家族へのメッセージのような文章です。
- 付言事項自体に法的な効力はありませんが、なぜその分け方にしたのかを伝えることで、相続人の納得感につながり、紛争予防に役立つと考えられています。
- 法的効力のある部分と混同しないよう、遺言書の中で明確に区分して書くことが大切です。
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付言事項とは何か
遺言書は「誰にどの財産を相続させるか」を定める法的な文書ですが、その末尾に、法的効力を持たない自由な文章を書き添えることができます。これを「付言事項」と呼びます。財産の分け方を決めた理由、家族への感謝の言葉、葬儀に関する希望など、法律には定めのない内容を自由に記載できる部分です。
法的効力はないのに、なぜ書く意味があるのか
付言事項には法的拘束力がなく、そこに書かれた内容にもとづいて権利や義務が発生することはないとされています。それでも多くの遺言書に付言事項が添えられるのは、相続人の心情面に働きかける効果が期待されているためです。たとえば「長男には家業を長年支えてもらったため多めに相続させる」という理由が書かれていれば、他の相続人も感情的な納得を得やすくなり、結果として遺留分侵害額請求などの紛争を防ぐ効果につながることがあるとされています。
また、単に財産の分配理由だけでなく、「これまで育ててくれてありがとう」「みんな仲良く暮らしてほしい」といった感謝や願いを伝える最後の機会としても活用されています。
付言事項に書かれることが多い内容
実務上よく見られる付言事項の内容としては、財産の分け方に差をつけた理由の説明、家族一人ひとりへの感謝のメッセージ、葬儀やお墓に関する希望、遺言執行者への配慮のお願いなどが挙げられます。ペットの世話について書き添える方もいますが、これも法的効力はないため、確実に実現したい場合は前回ご紹介した「負担付遺贈」など、法的効力のある形で別途定めておく必要があります。
書く際に気をつけたいこと
付言事項は自由に書ける部分だからこそ、法的効力のある本体部分と混同されないよう、明確に区分して記載することが望ましいとされています。また、特定の相続人を責めるような内容や、他の相続人との比較で傷つけるような表現は、かえって紛争の火種になりかねないため注意が必要です。感謝や理由の説明を中心に、前向きな内容でまとめることをおすすめします。
チェックリスト
- ☐ 財産の分け方に差がある場合、その理由を付言事項で説明することを検討した。
- ☐ 付言事項が本体部分と明確に区分されているか確認した。
- ☐ 特定の相続人を傷つける表現になっていないか見直した。
- ☐ 感謝の言葉や今後への願いなど、前向きな内容を盛り込んでいる。
Q. 付言事項に「遺留分は請求しないでほしい」と書けば、法的に請求できなくなりますか?
A. できないとされています。付言事項に法的拘束力はないため、遺留分侵害額請求の権利自体には影響しません。あくまで心情に訴える効果にとどまる点を理解しておく必要があります。
Q. 付言事項は自筆証書遺言でも公正証書遺言でも書けますか?
A. どちらの方式でも記載できるとされています。公正証書遺言の場合は、公証人と相談しながら文言を整えることもできます。
ワンポイントアドバイス: 付言事項は、財産の分け方だけでは伝わらない「なぜそう決めたか」を補う大切な部分です。書き方に迷う場合は、専門家と一緒に文案を整理しながら、ご自身の言葉で残すことをおすすめします。
まとめ
付言事項は法的効力を持たないものの、遺言者の想いを伝え、相続人同士の納得感を高める重要な役割を果たします。財産の分け方に差をつける場合は特に、その理由を付言事項で丁寧に説明しておくことで、将来の紛争を防ぐ効果が期待できます。
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