自分で書いた遺言書を見直していて、日付や文字を間違えたことに気づき、二重線を引いて書き直した経験はないでしょうか。柏市の行政書士だいち法務事務所です。自筆証書遺言は手軽に作れる一方で、訂正の仕方や日付の書き方に細かいルールが定められており、これを守らないと訂正そのものが無効になったり、遺言全体の有効性が争われたりすることがあるとされています。
この記事の結論
- 自筆証書遺言の加除訂正は、変更場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更場所に押印するという方式(民法968条3項)を満たさないと、その訂正自体が効力を生じないとされています。
- 日付は「令和8年9月1日」のように特定の一日が分かる形で自書する必要があり、「吉日」といった記載は日付の記載を欠くものとして無効と判断された裁判例があるとされています。
- 訂正の方式に不備があっても、内容から明らかな誤字・脱字と分かる場合は、遺言全体の効力には影響しないと考えられています。
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自筆証書遺言に求められる基本要件
自筆証書遺言が有効に成立するためには、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印することが必要とされています(民法968条1項)。パソコンで作成した本文や、日付印(スタンプ)を使った日付は自書の要件を満たさず無効になるとされています。なお2019年1月13日施行の改正により、財産目録に限ってはパソコン作成や通帳のコピー添付が認められるようになりましたが、その場合も財産目録の毎葉に署名・押印が必要とされている点は見落とされやすい要件です。
日付の書き方に潜む落とし穴
日付は、遺言が作成された時点における遺言者の判断能力の有無や、複数の遺言が存在する場合にどちらが新しいかを確定するための重要な要素と位置づけられています。そのため「令和8年9月吉日」のように特定の日を確定できない記載は、日付の自書を欠くものとして無効と判断された最高裁判例があるとされています。一方で「還暦の日」のように、暦から特定の日が客観的に確定できる記載であれば有効と扱われた例もあるとされていますが、確実性を重視するなら年月日を数字ではっきり書くことをおすすめします。
加除訂正には決まった方式がある(民法968条3項)
本文を書き間違えたときに二重線を引いて訂正するだけでは、法律上求められる方式を満たしていないとされています。民法968条3項では、遺言者が変更の場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ変更の場所に印を押さなければ、その変更は効力を生じないと定められています。つまり「どこを・どのように変更したか」を欄外などに書いて署名し、訂正箇所にも押印するという二重の手続きが必要になるとされています。
方式不備があっても遺言全体が無効になるとは限らない
もっとも、訂正の方式に不備があるからといって、遺言書そのものが直ちに無効になるわけではないとされています。訂正の効力が認められないだけで、訂正前の元の文言がそのまま遺言の内容として扱われる、あるいは内容全体から見て明らかな誤字・脱字と判断できる場合は遺言の効力に影響しないと考えられています。ただし、こうした判断は最終的に相続人間の解釈や裁判所の判断に委ねられることになるため、訂正箇所が多い遺言書は書き直しを検討したほうが安心です。
チェックリスト
- ☐ 日付を「令和〇年〇月〇日」のように特定の一日が分かる形で自書している。
- ☐ 本文・氏名を自書し、押印を済ませている。
- ☐ 財産目録をパソコンで作成した場合、毎葉に署名・押印している。
- ☐ 訂正箇所がある場合、変更場所の指示・付記・署名・押印のすべてを満たしている。
- ☐ 訂正箇所が多い場合は書き直しを検討している。
Q. 訂正箇所に押した印は、遺言書本文で使った印と同じものでないといけませんか?
A. 民法968条3項では「印を押さなければならない」とされているのみで、本文と同一の印であることまでは明文で要求されていないとされていますが、遺言者本人による訂正であることを明確にする観点から、本文と同じ印を使うことが望ましいと考えられています。
Q. 訂正が多くなってしまった場合、全部書き直すべきですか?
A. 訂正箇所が多いと、後から相続人間で「本当に遺言者本人による訂正か」「意図した内容と違うのではないか」といった争いの原因になりやすいとされています。訂正箇所が2〜3か所を超えるようであれば、清書して新しい遺言書を作り直すほうが望ましいと考えられます。
ワンポイントアドバイス: 訂正の方式ミスによる無効リスクを避けたい場合は、公証人が関与する公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度(様式チェックを受けられる)の利用も選択肢になります。作成段階で行政書士に内容を確認してもらうと、方式面のミスを未然に防ぎやすくなります。
まとめ
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、日付の書き方や訂正の方式に細かいルールがあり、これを誤ると訂正が無効になったり、後日の争いにつながったりする可能性があります。訂正箇所が多くなった場合は書き直しを検討し、不安がある場合は専門家によるチェックを受けることをおすすめします。
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行政書士は遺言書の文案作成や方式面の確認をサポートできる立場にあります。すでに書いた自筆証書遺言の内容を見てほしい、訂正箇所が多くて不安、という場合もお気軽にご相談ください。
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