遺品整理をしていたら、日付の違う遺言書が2通、別々の場所から見つかった。柏市の行政書士だいち法務事務所でも、こうしたご相談を受けることがあります。結論からお伝えすると、遺言書は日付の新しいものが優先されるというルールが民法1023条に定められているとされています。ただし、それは「2通のうち片方が丸ごと無効になる」という単純な話ではありません。
この記事の結論
- 前の遺言と後の遺言の内容が抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされるとされています(民法1023条)。
- 抵触しない部分については、古い日付の遺言書であっても有効なまま残るとされています。
- 自筆証書遺言と公正証書遺言のように方式が異なる場合でも、優先順位を決めるのは方式の違いではなくあくまで日付の先後とされています。
複数の遺言書が見つかった際のご相談を承ります
「抵触」とはどういう状態を指すか
民法1023条でいう「抵触」とは、前の遺言と後の遺言を同時に実現することが不可能なほど、内容が食い違っている状態を指すとされています。例えば「実家は長男に相続させる」と書いた前の遺言に対し、後の遺言で「実家は長女に相続させる」と書かれていれば、同じ不動産を2人に渡すことはできないため、この部分は抵触すると判断され、後の遺言の内容(長女への相続)が優先されると考えられています。一方で、前の遺言に「実家は長男に」、後の遺言に「預金は次男に」とだけ書かれていた場合は、内容が重ならないため両方とも有効なまま並び立つとされています。つまり「新しい遺言が見つかった以上、古い遺言は全部無効」と早合点しないことが重要です。
自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらが強いわけではない
「公正証書遺言のほうが自筆証書遺言より効力が強いのでは」というご質問もよくいただきますが、優先順位を決めるのは遺言の方式ではなく、あくまで作成された日付の先後とされています。したがって、後から自宅で書いた自筆証書遺言が、それより前に作成した公正証書遺言の内容と抵触する場合、その抵触部分については新しい自筆証書遺言の内容が優先されると考えられています。ただし、自筆証書遺言には民法968条が定める方式(全文自書・日付・氏名・押印等)を満たしている必要があり、方式に不備があればそもそも遺言として無効になり得る点には注意が必要です。
複数の遺言書を見つけたときの実務上の対応
見つかった遺言書のうち片方を破棄したり隠したりすることは、相続欠格事由(既存記事「遺言書を勝手に書き換えられた?」参照)に該当するおそれがあるため、絶対に避けるべきです。まずはすべての遺言書をそのままの状態で保管し、自筆証書遺言(保管制度を利用していないもの)であれば家庭裁判所での検認手続きを経る必要があるとされています。そのうえで、どの部分が抵触し、どの部分が両立するのかを条文に沿って整理する作業が必要になりますが、この判断には専門的な読み解きが必要になることが多く、相続人だけで抵触の有無を正確に切り分けるのは容易ではないと考えられています。
チェックリスト
- ☐ 見つかった遺言書それぞれの作成日付を確認している。
- ☐ 各遺言書の内容のうち、重なる部分(抵触部分)と重ならない部分を書き出している。
- ☐ 自筆証書遺言について、検認手続きが必要かどうかを把握している。
- ☐ 遺言書を絶対に破棄・隠匿しないよう相続人間で共有している。
Q. 2通の遺言書の日付が同じだった場合はどうなりますか?
A. 日付が完全に同一で先後関係を判断できない特殊なケースについては、個別の事情によって考え方が分かれ得るとされています。実務上まれなケースですが、該当する場合は専門家に相談し、記載内容や作成経緯から慎重に判断することが望ましいと考えられています。
Q. 遺言書はいくつまで作成しても構いませんか?
A. 法律上、遺言書の作成回数に上限はないとされています。もっとも、書き直すたびに前の遺言との抵触関係が複雑になり、相続人が混乱する原因にもなりかねないため、内容を更新する際は古い遺言書をどう扱うかもあわせて明確にしておくことが望ましいと考えられています。
ワンポイントアドバイス: 遺言の内容を変更したい場合は、新しい遺言に「これまでの遺言をすべて撤回する」旨を明記しておくと、抵触の有無を巡る解釈のブレを防ぎやすくなるとされています。書き直しを検討する際は、古い遺言書の処分方法もあわせて専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
複数の遺言書が見つかっても、慌てて古いほうを処分する必要はありません。日付の新しい遺言が優先されるのは抵触する部分に限られ、それ以外の部分は古い遺言も有効に残るという仕組みを理解しておくことが大切です。判断に迷う場合は、遺言書をそのままの状態で保管したうえで、早めに専門家へご相談ください。
遺言書の内容確認・検認手続きのご相談はお気軽に
行政書士は、複数の遺言書の内容整理や、検認手続きに向けた準備をサポートできます。どちらの遺言に従えばよいか判断がつかない場合も、まずは現物を保管したままご相談ください。
参考URL
関連記事
- 前に書いた遺言、書き直したら前のは無効になる?|遺言の撤回・書き換えのルール
- 自筆の遺言書を見つけた…すぐに開けていい?|検認を怠ると過料も、家庭裁判所での手続きの流れ


コメント