入院中・施設にいる親でも公正証書遺言は作れる?|公証人の出張の流れと病床執務加算・日当の目安、証人の手配

入院中や介護施設に入所中の方が、公証人の出張によって公正証書遺言を作成する流れと、病床執務加算・日当・交通費、証人の手配を解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
入院中や施設に入所中でも、公証人に出張してもらえば公正証書遺言を作成でき、手数料の加算・日当・交通費がかかるとされています

「父が入院していて、退院の見通しが立っていません。元気なうちに遺言を残しておきたいと本人も話しているのですが、病室でも作れるのでしょうか」――柏市の行政書士だいち法務事務所でも、このようなご相談をいただくことがあります。公正証書遺言は公証役場で作るもの、というイメージが強いかもしれません。実は、公証人に病院や介護施設、自宅まで来てもらって作成する方法があります。(参考例)ご家族が「もう少し体調が落ち着いてから」と先延ばしにしているうちに、本人の判断能力が低下し、遺言を作れなくなってしまったというケースもあります。今回は、公証人の出張による公正証書遺言の作り方と、費用・証人の手配について整理します。

この記事の結論

  • 入院中や施設に入所中でも、公証人に病院・施設・自宅へ出張してもらえば、公正証書遺言を作成できます。ただし、本人が遺言の内容を理解し、自分の意思で伝えられることが前提です。
  • 出張の場合は、通常の手数料に加えて、財産の価額に応じた手数料の2分の1にあたる「病床執務加算」、公証人の日当(往復4時間以内で1万円、超えると2万円とされています)、交通費の実費がかかるのが一般的です。
  • 証人2人も病室や施設に立ち会う必要があります。内容の整理と必要書類の準備は家族や専門家が先に進め、本人の体調がよい日に作成日を合わせることが大切です。

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入院中・施設入所中でも作れる理由と、作成できる条件

公証人は原則として公証役場で仕事をしますが、病気などで本人が役場に出向けない場合は、病院・介護施設・自宅などに出張して公正証書を作成できるとされています。公正証書遺言の作り方そのものは、公証役場で作る場合と同じです。

出張を依頼する際には、次の点を押さえておきましょう。

  • 出張できる範囲:公証人が出張できるのは、所属する法務局の管轄区域内に限られるとされています。柏市や松戸市の病院・施設であれば、千葉県内の公証役場(柏公証役場など)に依頼するのが基本です。東京都内の病院に入院している場合は、都内の公証役場に依頼することになります。
  • 遺言能力:本人が遺言の内容と、その結果どうなるかを理解できる状態であることが必要です。公証人は面談のなかで本人の意思と判断能力を確認します。認知症の診断を受けている場合などは、主治医の診断書を用意しておくと、後で有効性を争われるリスクを下げることにつながると考えられます。
  • 署名ができない場合:病気で字を書けない状態でも、公証人がその理由を付記することで、本人の署名に代えることができるとされています(民法969条4号ただし書)。話すことが難しい方も、通訳や筆談によって遺言の趣旨を伝える方法が定められています(民法969条の2)。

なお、2025年10月からはウェブ会議による公正証書遺言の作成(リモート方式)も始まっていますが、病院から参加する場合は本人確認や意思確認が慎重に判断され、出張による作成を勧められることも考えられます。

公証人の出張による作成の流れ

出張の場合も、事前準備の大部分は家族や専門家が代わりに進められます。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 本人の希望を聞き取る:誰に、どの財産を、どのように残したいかを本人から直接聞き取ります。家族が内容を誘導しているように見えると、後で遺言の有効性が争われる原因になりかねないため、本人の言葉を大切にします。
  2. 必要書類をそろえる:本人の印鑑登録証明書(または運転免許証等の本人確認資料)、本人と相続人の続柄が分かる戸籍謄本、財産を受け取る人の住民票、不動産があれば登記事項証明書と固定資産評価証明書などが一般的です。
  3. 公証役場に相談・依頼する:出張で作成したい旨を伝え、遺言の内容と書類を事前に送ります。公証人が案文を作成し、家族を通じて本人に内容を確認してもらいます。
  4. 日程と場所を調整する:病院や施設に、公証人と証人2人が訪問して面談する許可を取ります。ほかの患者さんに話が聞こえないよう、個室や面談室を使えるか確認しておくと安心です。
  5. 作成当日:公証人が本人と面談し、意思を確認したうえで遺言の内容を読み聞かせ、本人と証人が内容を確認して署名します。署名の方法(電子サインを含む)は、公証役場の案内に従います。
  6. 手数料の支払いと受け取り:当日またはその後に手数料を支払い、正本・謄本を受け取ります。原本は公証役場に保管されます。

本人の体調は日によって変わることがあります。作成日の当日に体調が急に悪化した場合に備え、予備の日程を相談しておくことも考えられます。

出張の費用の目安と、証人の手配

出張による公正証書遺言では、公証役場で作成する場合の費用に、次のような費用が上乗せされるのが一般的とされています。

  • 病床執務加算:財産の価額(受け取る人ごとに計算)に応じた手数料の2分の1が加算されます。通常の手数料のおよそ1.5倍になるイメージです。
  • 日当:公証人の日当として、往復に要する時間が4時間以内なら1万円、4時間を超える場合は2万円とされています。
  • 交通費:公証人の移動にかかった交通費の実費がかかります。

公証人の手数料は2025年10月に改定されており、財産の合計が1億円以下の場合の「遺言加算」も変更されています。正確な金額は、事前に公証役場で見積もりを出してもらうと安心です。

証人2人は、未成年者や、推定相続人・財産を受け取る人とその配偶者・直系血族などはなれません(民法974条)。つまり、看病している子や配偶者は証人になれないのが通常です。身近に適任者がいない場合は、公証役場に紹介してもらうか、行政書士などの専門家に依頼する方法があり、その場合は証人の日当や交通費も見込んでおく必要があります。また、病院・施設の面会時間や人数の制限によっては、証人の入室に事前の届出が必要なこともあります。

チェックリスト

  • ☐ 本人が誰に何を残したいか、本人の言葉で聞き取った。
  • ☐ 入院先・入所先の所在地から、依頼する公証役場を決めた。
  • ☐ 印鑑登録証明書・戸籍謄本・登記事項証明書などの書類をそろえた。
  • ☐ 主治医の診断書が必要かどうか、検討している。
  • ☐ 病院・施設に、公証人と証人の面会の許可を取った。
  • ☐ 推定相続人以外で、証人になれる人を2人確保した。
  • ☐ 病床執務加算・日当・交通費を含めた見積もりを公証役場に確認した。

Q. 作成のとき、家族は病室に同席してもいいのですか?

A. 推定相続人である家族は証人になれず、本人の真意を確認するため、遺言の内容を確認する場面では席を外すよう求められることが多いとされています。後から「家族に言わされたのでは」と疑われないためにも、公証人の案内に従うのが安心です。

Q. 容体が急変して、公証人の日程を待てそうにありません。

A. 死亡の危急が迫っている場合には、証人3人以上の立会いのもとで口頭で遺言を残す「死亡危急者遺言」(民法976条)という特別な方式があります。ただし、20日以内に家庭裁判所の確認を受ける必要があるなど要件が厳しいため、できるだけ早い段階で公正証書遺言の準備を始めることが望ましいと考えられます。

Q. 自筆証書遺言なら、出張費用をかけずに病室で書けますか?

A. 全文・日付・氏名を自書できれば、病室で自筆証書遺言を書くことは可能です。とはいえ、法務局の保管制度は本人が法務局に出向く必要があるため、入院中は利用しにくい面があります。手が不自由な場合や、有効性を争われる心配がある場合は、公正証書遺言を検討するのが一般的です。

ワンポイントアドバイス: 出張による遺言づくりで一番大切なのは、「本人の体調がよいうちに、準備を前倒しで進めること」です。案文の打ち合わせ、書類集め、証人の確保、病院との調整は家族側で同時に進められます。柏市・松戸市・流山市・我孫子市の病院や施設に入院・入所中の方の遺言について、文案の作成から公証役場との調整、証人のご用意まで相談室でお手伝いします。

まとめ

入院中や施設に入所中でも、公証人に出張してもらえば公正証書遺言を作成できます。本人が内容を理解して意思を伝えられることが前提で、字が書けない場合も公証人の付記で署名に代える方法があります。費用面では、病床執務加算(手数料の2分の1)、日当、交通費が上乗せされるため、事前に見積もりを確認しましょう。証人2人の確保や病院・施設との調整も含め、本人の体調がよいうちに準備を進めることが何よりの備えになります。

病室や施設での遺言づくり、柏市の相談室にご相談ください

行政書士は、遺言書の文案作成、必要書類(戸籍等)の収集、公証役場との打ち合わせ、公正証書遺言の証人としての立会いなどを承っております。なお、相続人間の紛争性がある場合の交渉・訴訟は弁護士、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の試算・申告は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

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