耳や口が不自由でも公正証書遺言は作れる?|手話通訳・筆談による方式(民法969条の2)と準備のポイント

耳が聞こえない方・口がきけない方が手話通訳や筆談で公正証書遺言を作る方式(民法969条の2)と、通訳人の手配・公証役場との事前相談のポイントを解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
耳や口が不自由な方も、通訳人の通訳や自書によって公正証書遺言を作ることができるとされています(民法969条の2)

「父は耳が聞こえず、ふだんは手話と筆談で話しています。公正証書遺言は口で内容を伝えるものだと聞いたのですが、父でも作れるのでしょうか」――柏市の行政書士だいち法務事務所には、ご家族からこうしたご相談をいただくことがあります。公正証書遺言は、遺言者が公証人に内容を「口で伝える」ことが基本とされているため、耳や口が不自由な方は利用できないと思われがちです。(参考例)病気の後遺症で話すことが難しくなったお母さまについて、「もう遺言は無理だと思っていた」というご家族もいらっしゃいました。今回は、耳や口が不自由な方が公正証書遺言を作るための方式と、準備のポイントを整理します。

この記事の結論

  • 耳や口が不自由な方も、公正証書遺言を作ることができます。口がきけない方は、手話などの通訳人の通訳か、自分で書くこと(自書)によって、口頭で伝える「口授」に代えることができるとされています(民法969条の2第1項)。
  • 耳が聞こえない方は、公証人が筆記した内容を、通訳人の通訳によって伝えてもらう方法で「読み聞かせ」に代えることができます(同条2項)。証人が耳が聞こえない場合も同様です。
  • 方式が守られていないと、後から遺言の有効性が争われるおそれがあります。通訳人の手配や当日の進め方は、公証役場と事前にしっかり打ち合わせておくことが大切です。

伝え方に不安があっても、遺言はあきらめなくて大丈夫です

公正証書遺言の「口授」と「読み聞かせ」とは

公正証書遺言は、民法969条に定められた方式で作成します。基本的な流れは、遺言者が証人2人以上の立会いのもとで遺言の趣旨を公証人に口頭で伝え(口授)、公証人がそれを書面にまとめ、その内容を遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させて確認し、最後に全員が署名するというものです。

このうち「口で伝える」「読み聞かせを聞く」という部分は、耳や口が不自由な方にとっては大きな壁になります。以前は、この口授の要件を満たせないことから、口がきけない方は公正証書遺言を作ることができないと考えられていました。

そこで1999年(平成11年)の民法改正により、民法969条の2が設けられ、手話通訳や筆談などによって公正証書遺言を作れる道が開かれました。障害の有無にかかわらず、自分の意思で財産の行き先を決められるようにするための規定です。

民法969条の2が定める3つの方法

民法969条の2は、状況に応じて次のような方法を定めています。

  • 口がきけない方(口授に代える方法):遺言の趣旨を、公証人と証人の前で、通訳人の通訳(手話通訳など)によって伝えるか、自分で紙に書いて伝えます。筆談が可能な方であれば、通訳人を介さずに自書で伝える方法も選べます。
  • 耳が聞こえない方(読み聞かせに代える方法):公証人が筆記した内容を、通訳人の通訳によって遺言者に伝えます。文字を読める方であれば、もともと民法969条に定められている「閲覧」によって確認する方法もあります。
  • 証人が耳が聞こえない場合:遺言者だけでなく、証人が耳の聞こえない方である場合も、通訳人の通訳によって読み聞かせに代えることができます。耳が聞こえないことは、証人になれない理由(民法974条の欠格事由)には含まれていません。

いずれの方法をとった場合も、公証人は、その方式によって作成したことを証書に付記しなければならないとされています(民法969条の2第3項)。どの方法で遺言者の意思を確認したのかが、公正証書そのものに記録されるしくみです。

なお、目が見えない方の場合は、読み聞かせによって内容を確認できるため、通常の方式で作成できます。病気などで署名ができない場合も、公証人がその理由を付記することで署名に代えられるとされています(民法969条4号ただし書)。

準備のポイント:通訳人の手配と公証役場との事前相談

方式そのものは法律で認められていても、当日の進め方があいまいだと、後になって「本当に本人の意思だったのか」と争われる原因になります。準備の段階で、次の点を押さえておきましょう。

  1. どの方法で伝えるかを決める:手話が中心か、筆談が中心か、両方を組み合わせるかを、ふだんのコミュニケーションの方法に合わせて決めます。複雑な財産の内容を伝える場合は、筆談のメモを事前に用意しておくと確認がスムーズです。
  2. 通訳人を手配する:通訳人は、遺言者の意思を正確に伝えられる人である必要があります。手話通訳士など第三者の通訳人を立てるのが望ましく、利害関係のある家族が通訳を務めることは、後のトラブルを避ける観点から慎重に考えたほうがよいでしょう。通訳の費用は公証人手数料とは別にかかるのが一般的です。
  3. 公証役場と事前に打ち合わせる:柏市にお住まいの方であれば、柏公証役場などに、通訳人を伴うことや当日の確認方法を事前に伝え、所要時間や必要な準備を相談しておきます。打ち合わせの段階から通訳人に同席してもらうと安心です。
  4. 証人2人を確保する:証人は、未成年者や推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などはなれません。公証役場で紹介してもらえる場合もあるため、あわせて相談しておきましょう。

また、遺言の内容そのものを整理しておくことも欠かせません。どの財産を誰に残すのか、遺言執行者を誰にするのかといった文案を事前に固めておけば、当日は確認作業に集中でき、遺言者ご本人の負担も軽くなります。

チェックリスト

  • ☐ 遺言者がふだん、手話・筆談・読み書きのどの方法で意思を伝えているか確認した。
  • ☐ 口授に代える方法(通訳か自書か)と、読み聞かせに代える方法を決めた。
  • ☐ 利害関係のない通訳人を手配できる見通しがある。
  • ☐ 公証役場に、通訳人を伴って作成したい旨を事前に伝えている。
  • ☐ 証人2人が欠格事由にあたらないことを確かめた。
  • ☐ 財産の内容と、誰に何を残すかの文案をまとめた。
  • ☐ 通訳費用・公証人手数料などの費用の目安を把握している。

Q. 家族が手話通訳をしてもよいのでしょうか?

A. 法律上、通訳人の資格は細かく定められていませんが、財産を受け取る家族が通訳をすると、後から「通訳の内容が本人の意思と違っていたのではないか」と疑われるおそれがあります。中立の立場にある手話通訳者に依頼するほうが安心と考えられます。

Q. 文字が書ける場合は、自筆証書遺言のほうが簡単ですか?

A. 全文を自分で書ける方であれば、自筆証書遺言を作ることもできます。ただし、方式の不備による無効のリスクや、亡くなった後の検認の手間があります。財産が多い場合やご家族間で意見が分かれそうな場合は、公証人が関与する公正証書遺言を選ぶ方が多いとされています。

Q. 病気で話せなくなったばかりで、手話もまだ使えません。どうすればよいですか?

A. 筆談やうなずきだけでは意思の確認が十分でないと判断されることもあります。書くことができるのであれば自書による方法を、それも難しい場合はどのような確認方法がとれるかを、早めに公証役場や専門家に相談することが大切です。

ワンポイントアドバイス: 耳や口が不自由な方の遺言で大切なのは、「本人の意思で作った」ことを、後からでも説明できるようにしておくことです。整骨院の経営を通じて、ご高齢の方や体の不自由な方と向き合ってきた経験もふまえ、柏市・松戸市・流山市・我孫子市の方の遺言の文案づくりから、公証役場との打ち合わせの段取りまで、ご本人のペースに合わせてお手伝いします。

まとめ

耳や口が不自由な方も、民法969条の2の方式によって公正証書遺言を作ることができます。口がきけない方は通訳人の通訳か自書で口授に代え、耳が聞こえない方は通訳人の通訳で読み聞かせに代えることができ、公証人はその旨を証書に付記します。後から有効性を争われないよう、中立の通訳人を手配し、公証役場と事前に進め方を打ち合わせておくことが大切です。伝え方に不安があっても、遺言をあきらめる必要はありません。

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行政書士は、遺言書の文案作成のサポート、公証役場との打ち合わせの調整、証人としての立会いなどを承っております。なお、遺言の有効性をめぐる紛争の代理は弁護士、相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

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