余命わずかな家族に遺言を残したい…間に合わない時はどうする?|死亡危急者遺言(民法976条)という特別な方式

死亡危急者遺言(危急時遺言)の要件を解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
死亡の危急に迫った場合に作成できる特別方式の遺言(民法976条)と20日以内の確認請求を解説

「病状が急変し、公正証書遺言を準備する時間がもうない」というご相談を受けることがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。通常の遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)を用意する余裕がないほど死亡の危急に迫っている場合には、証人3人以上の立会いのもとで作成する「死亡危急者遺言(危急時遺言)」という特別な方式が民法976条に定められているとされています。

この記事の結論

  • 死亡の危急に迫った人が遺言を残す場合、証人3人以上の立会いのもとで、そのうちの1人に遺言の趣旨を口授(口頭で伝えること)する方式で作成できるとされています(民法976条1項)。
  • 作成後20日以内に、証人の一人または利害関係人が家庭裁判所へ「確認」を請求しなければ、遺言の効力が生じないとされています。
  • 遺言者が普通の方式で遺言できる状態に回復し、その状態のまま6か月間生存すると、危急時遺言の効力は失われるとされています。

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死亡危急者遺言(民法976条)とはどんな制度か

死亡危急者遺言は、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った人のための特別な遺言方式です。証人3人以上の立会いのもとで、そのうちの1人が遺言者から遺言の趣旨を口授され、これを筆記したうえで遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確性を承認したのちに署名・押印することで成立するとされています(民法976条1項)。公正証書遺言のように公証人が関与するわけではなく、証人だけで完結させられる点が最大の特徴です。

作成後20日以内の家庭裁判所への「確認」請求が必須

危急時遺言は作成しただけでは効力が確定せず、遺言の日から20日以内に証人の一人または利害関係人が家庭裁判所に対して「確認」を請求し、その審判を得なければ効力を生じないとされています。この「確認」は、遺言書の保管方法を届け出るだけの「検認」とは異なり、家庭裁判所が遺言の内容が遺言者の真意にもとづくものかどうかを実質的に判断する手続きとされています。20日という期限は起算日を含めて厳格に扱われるため、証人の誰が請求を担当するかを早い段階で決めておくことが重要です。

回復して6か月生存すると効力を失う点にも注意

危急時遺言はあくまで緊急避難的な制度であるため、その後遺言者の容体が回復し、普通の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言等)によって遺言をすることができる状態になった時から6か月間生存した場合には、危急時遺言の効力は失われるとされています。したがって、危急時遺言で意思を残せたとしても、体調が落ち着いた段階で公正証書遺言等をあらためて作成し直しておくことが望ましいとされています。

チェックリスト

  • ☐ 遺言者の病状が、通常の方式を準備する時間的余裕がないほど切迫しているか確認した。
  • ☐ 証人になれる3人以上(未成年者や推定相続人等の欠格事由に当たらない人)を手配できるか確認している。
  • ☐ 遺言作成後20日以内に家庭裁判所への確認請求を行う段取り・担当者を決めている。
  • ☐ 遺言者が回復した場合、あらためて公正証書遺言等の通常方式で作り直す方針を共有している。

Q. 危急時遺言の証人には、誰でもなれますか?

A. 未成年者や、推定相続人・受遺者及びその配偶者・直系血族など、公正証書遺言と同様の欠格事由に該当する人は証人になれないとされています。利害関係のない中立的な立場の人を選ぶ必要があります。

Q. 家庭裁判所の「確認」を受ければ、それで手続きは完了ですか?

A. 確認を受けても、それだけで手続きが完了するわけではないとされています。相続開始後には通常の遺言と同様に家庭裁判所での検認の手続きが別途必要になる点に注意が必要です。確認と検認は目的の異なる別の手続きです。

ワンポイントアドバイス: 危急時遺言は要式が細かく、証人の要件や20日以内の確認請求といった期限を一つでも欠くと無効になりかねない制度です。可能な範囲で、体調が安定しているうちに公正証書遺言等の通常方式を準備しておくことが、もっとも確実な備えになります。

まとめ

死亡危急者遺言は、通常の方式を準備する時間がないほど症状が切迫した場合の最後の手段として民法976条に定められていますが、証人の要件や20日以内の家庭裁判所への確認請求など、満たすべき条件が多い制度です。事前に公正証書遺言を準備しておくことが、最も確実な備えになります。

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