遺言書の「相続させる」と「遺贈する」、同じ意味だと思っていませんか?|登記・放棄の手続きで生じる違い

遺言書の「相続させる」と「遺贈する」の違いを解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
登記・放棄の手続きで生じる違い

こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。

「自分で遺言書の文案を考えているが、『〇〇に相続させる』と『〇〇に遺贈する』、どちらの言葉を使えばいいのか分からない」というご相談を受けることがあります。どちらも財産を特定の人に渡す意味では似ていますが、法律上は異なる扱いがされる文言とされており、登記や放棄の手続きに違いが生じる場合があります。

この記事の結論

  • 相続人に対して「相続させる」と書く遺言は、特定財産承継遺言(民法1014条2項)として扱われるとされています
  • 不動産を「相続させる」場合、その相続人が単独で相続登記を申請できるとされていますが、「遺贈する」場合は原則として他の相続人や遺言執行者との共同申請が必要とされています
  • 相続人以外の人に財産を渡す場合は「遺贈する」という文言を使う必要があるとされています(相続人以外には「相続させる」は使えません)

遺言書の文言でお悩みの方は、文案作成の段階からご相談ください

「相続させる」と「遺贈する」、法律上は何が違う?

「相続させる」旨の遺言は、財産を受け取る人が法定相続人である場合に使う文言で、判例上は遺産分割方法の指定と解され、実務上は特定財産承継遺言(民法1014条2項)として整理されているとされています。一方「遺贈する」は、相続人であるかどうかを問わず、遺言によって財産を無償で譲る意思表示とされています。相続人に財産を残したい場合、どちらの文言でも渡すこと自体は可能とされていますが、法律上の性質が異なるため、その後の手続きに差が出るとされています。

登記・農地・賃借権で生じる具体的な違い

不動産を「相続させる」場合、その財産を受け取る相続人は、他の相続人の関与なしに単独で相続登記を申請できるとされています。これに対して「遺贈する」場合は、原則として受遺者と、遺言執行者または他の相続人全員との共同申請が必要とされ、手続きの手間が増える傾向にあるとされています。農地を承継させる場合も、「相続させる」であれば農業委員会の許可が不要とされていますが、「遺贈する」場合は許可が必要になるケースがあるとされています。同様に、賃借権(借家・借地)を承継させる場合、「相続させる」であれば賃貸人の承諾は不要とされていますが、「遺贈する」場合は承諾が必要になり得るとされています。

また、相続人以外の第三者(内縁の配偶者や、お世話になった知人など)に財産を渡したい場合は「遺贈する」という文言を使う必要があるとされています。相続人ではない人に「相続させる」と書いても、その意味では扱われないと考えられるため、注意が必要です。

放棄の手続きにも違いがある

財産を受け取りたくない場合の手続きにも違いがあるとされています。「相続させる」旨の遺言で財産を指定された相続人が受け取りを希望しない場合は、家庭裁判所への相続放棄の申述(自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内)が必要とされています。相続放棄をすると、その他のプラスの財産も受け取れなくなる点に注意が必要です。一方、遺贈のうち、財産を特定して渡す「特定遺贈」は、家庭裁判所の手続きを経ずに、いつでも意思表示のみで放棄できるとされています(包括遺贈の場合は相続放棄と同様の扱いになるとされています)。

チェックリスト

  • ☐ 財産を渡したい相手が法定相続人かどうかを確認した
  • ☐ 相続人以外に財産を渡したい場合は「遺贈する」という文言を使っている
  • ☐ 不動産・農地・賃借権など、財産の種類ごとに必要な手続きの違いを把握している
  • ☐ 財産を受け取る側が放棄したくなった場合の手続きの違いも考慮している

Q. 昔からの言い回しで「遺贈する」と書いてしまいましたが、相続人には無効になりますか?

A. 相続人に対する遺贈も、それ自体は有効とされています。ただし、単独登記ができない、農地の許可が必要になり得るなど、「相続させる」の場合と比べて手続き面での負担が増える可能性があるとされています。

Q. 一つの遺言書の中で「相続させる」と「遺贈する」を使い分けてもいいのでしょうか?

A. 財産を受け取る人が相続人か第三者かによって使い分けることは可能と考えられます。誰にどの文言を使うべきか迷う場合は、専門家に確認しながら文案を作成することをおすすめします。

Q. 遺言執行者を指定していれば、こうした手続きの違いは気にしなくてもよいですか?

A. 遺言執行者を指定しておくと、遺贈の登記手続きなどを執行者が単独で進められる場合があるとされ、負担の軽減につながると考えられます。とはいえ、文言による性質の違い自体がなくなるわけではないため、あわせて理解しておくとよいでしょう。

ワンポイントアドバイス: 「相続させる」か「遺贈する」かは、単なる言葉選びではなく、相続開始後の登記手続きの手間や放棄の可否に直結する重要なポイントとされています。財産の種類・受け取る人が相続人かどうかを整理したうえで、文言を選んでいくとよいでしょう。

遺言書の文言は、一見些細な違いに見えても、相続開始後の手続きの負担に大きく影響するとされています。ご自身で文案を考える際は、財産の種類や渡したい相手との関係を整理したうえで、専門家に確認しながら進めることをおすすめします。

遺言書の文案作成は、当事務所にお任せください

当事務所では、財産の種類や渡したい相手に応じた遺言書の文言の整理・文案作成をサポートいたします。実際の相続登記の手続きは司法書士と、相続税に関わる内容は税理士と連携してご案内します。

参考URL

関連記事

コメント