「夫(妻)が亡くなっても、配偶者には相続税がかからないと聞いたのですが本当ですか」というご質問をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。たしかに、配偶者が取得した遺産が1億6千万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからないとされています(相続税法19条の2、配偶者の税額軽減)。ただし、この制度は「何もしなくても自動的に使える」ものではなく、申告や遺産分割の期限など守るべき要件があります。制度の仕組みと、見落としやすい「二次相続」の注意点を整理します。
この記事の結論
- 配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからないとされています。
- 適用を受けるには、税額がゼロになる場合でも相続税の申告書を提出する必要があり、原則として申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が済んでいることが求められるとされています。
- 配偶者が多くの財産を取得すると、その配偶者が亡くなったときの「二次相続」で子どもの相続税負担が重くなる場合があるため、一次相続と二次相続を通算して検討することが大切とされています。
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配偶者の税額軽減とはどんな制度か
配偶者の税額軽減は、亡くなった方の配偶者が遺産を取得した場合に、一定額まで相続税がかからないようにする制度とされています。上限は「1億6千万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額です。たとえば相続人が配偶者と子の場合、配偶者の法定相続分は2分の1ですので、遺産総額が4億円であれば2億円までの取得について税額が軽減される計算になります。遺産総額がそれほど大きくない家庭では、配偶者が取得する分について相続税がかからないケースが多いといえます。
対象となるのは、婚姻届を提出している法律上の配偶者に限られるとされています。内縁関係の方はこの制度を使えませんので、注意が必要です。また、財産を仮装・隠蔽していた部分については、この軽減の対象外とされています。
適用を受けるための要件と手続き
見落とされやすいのが、「税額がゼロになる場合でも申告は必要」という点です。配偶者の税額軽減は、相続税の申告書を提出して初めて適用されるとされています。申告書には、戸籍謄本のほか、遺言書の写しや遺産分割協議書の写し(相続人全員の印鑑証明書付き)など、配偶者が取得した財産が分かる書類を添付します。
原則として、申告期限までに遺産分割が済んでいない財産は、軽減の対象になりません。期限までに話し合いがまとまらない場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、3年以内に分割が成立すれば、その後に更正の請求(分割成立の日の翌日から4か月以内)をすることで適用を受けられるとされています。3年以内に分割できない事情(調停・訴訟中など)がある場合は、税務署長の承認を受けるための申請が別途必要になります。
見落としやすい「二次相続」の落とし穴
「配偶者に全部相続させれば税金がかからないから一番得」と考えがちですが、ここに落とし穴があります。一次相続で配偶者が多くの財産を取得すると、その配偶者が亡くなったとき(二次相続)には配偶者の税額軽減が使えず、さらに法定相続人が1人減るため基礎控除額も小さくなります。その結果、一次相続と二次相続の相続税を合計すると、かえって負担が大きくなる場合があるとされています。
一方で、配偶者の年齢や健康状態、今後の生活費、自宅に住み続けたいかどうかといった事情も大切です。税額だけでなく、残された配偶者の生活の安心も含めて、遺産の分け方を考えることが望まれます。具体的な税額シミュレーションは税理士の業務ですので、必要に応じて税理士にご相談ください。
チェックリスト
- ☐ 遺産総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかを確認している。
- ☐ 税額がゼロになる見込みでも、配偶者の税額軽減を使うには申告が必要なことを理解している。
- ☐ 申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割協議がまとまりそうか見通しを立てている。
- ☐ まとまらない場合に備え、「申告期限後3年以内の分割見込書」の存在を知っている。
- ☐ 二次相続まで見据えて、配偶者と子の取得割合を検討している。
Q. 相続税がゼロになるなら、申告しなくても問題ありませんか?
A. 配偶者の税額軽減を適用した結果として税額がゼロになる場合でも、申告書の提出は必要とされています。申告をしないと軽減が適用されず、本来の相続税額に加えて無申告加算税などが課される可能性があるため、注意が必要です。
Q. 長年一緒に暮らしてきた内縁の妻にも使えますか?
A. 配偶者の税額軽減の対象は、婚姻届を提出した法律上の配偶者に限られるとされています。内縁関係の方は法定相続人にもなりませんので、財産を遺したい場合は遺言書による遺贈などを生前に検討しておく必要があります。
ワンポイントアドバイス: 配偶者の税額軽減は、申告期限までに遺産分割協議がまとまっていることが前提になります。10か月は意外と短いため、相続人調査や財産目録の作成は早めに取りかかり、遺産分割協議書を期限に間に合うよう準備しておくと安心です。
まとめ
配偶者の税額軽減を使えば、1億6千万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、配偶者に相続税はかからないとされています。もっとも、適用には申告書の提出と期限内の遺産分割が必要で、二次相続まで含めると「配偶者に全部」が最善とは限りません。制度の要件を押さえたうえで、ご家族の生活と税負担の両面から分け方を検討することをおすすめします。
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