障害のある子の将来が心配…親なき後に備える遺言はどう書く?|負担付遺贈・信託・成年後見の組み合わせ

障害のある子の親なき後に備える遺言の書き方と負担付遺贈・信託・成年後見の組み合わせを解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
遺言だけでは子の財産管理までは決めきれない、負担付遺贈・信託・成年後見を組み合わせて備える

「知的障害のある息子がいます。私たち夫婦がいなくなった後、この子のお金や暮らしは誰が見てくれるのでしょうか」。いわゆる「親なき後」の問題は、障害のあるお子さんを育てるご家族にとって、いつも心のどこかにある不安ではないでしょうか。こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。今回は、親なき後に備えて遺言で何ができるのか、そして遺言だけでは足りない部分を信託や成年後見でどう補うのかを整理します。

この記事の結論

  • 遺言で障害のある子に多くの財産を残しても、本人が自分で管理できなければ、使うためには成年後見人などの支えが必要になります。また、遺言で成年後見人を指定することはできず、選ぶのは家庭裁判所とされています。
  • 遺言では、きょうだい等に財産を多めに遺贈する代わりに、障害のある子の生活を支えることを負担として課す「負担付遺贈」(民法1002条)が使えます。確実に実行してもらうため、遺言執行者もあわせて指定しておくことが大切です。
  • 遺言だけでは「親の死後、長い期間にわたってお金をどう渡すか」までは決めにくいため、家族信託や特定贈与信託、成年後見制度と組み合わせて設計するのが現実的と考えられます。

親なき後の備え方、ご家族の状況に合わせて柏市の相談室でご一緒に考えます

「子に全部相続させる」遺言だけでは足りない理由

親として真っ先に思いつくのは、「障害のある子に財産を多めに残す」という遺言かもしれません。もちろん、それ自体は有効な遺言です。ただし、本人が預金の引き出しや契約などを自分で判断することが難しい場合、相続した財産があっても、それを生活のために使う段階でつまずいてしまうことがあります。

判断能力が十分でない方の財産管理には、成年後見制度が使われるのが一般的です。ここで注意したいのが、遺言で指定できる後見人は「未成年後見人」(民法839条)に限られ、成年の子の後見人を遺言で決めることはできないという点です。成年後見人は家庭裁判所が選任するため、親の希望どおりの人が選ばれるとは限らず、専門職が選ばれることもあるとされています。

さらに、障害のある子だけに財産を集中させると、ほかの子どもの遺留分を侵害し、きょうだい間の関係がぎくしゃくするおそれもあります。親なき後に本当に頼りになるのは、多くの場合きょうだいや親族です。財産の配分だけでなく、「誰に、どのように支えてもらうか」まで考えた遺言にすることが重要です。

遺言でできる備え:負担付遺贈と遺言執行者の指定

遺言でよく検討されるのが「負担付遺贈」です。たとえば、長女に自宅や預金を多めに遺贈する代わりに、「障害のある長男の生活費を毎月援助すること」「長男の住まいや施設との連絡を担うこと」といった負担を課す方法です。負担を受けた人は、受け取った財産の価額を超えない範囲で、その負担を果たす責任を負うとされています(民法1002条)。

もっとも、負担付遺贈には弱点もあります。受け取った人が負担を果たさない場合、相続人は相当の期間を定めて履行を求め、それでも果たされなければ、家庭裁判所に遺言の取消しを請求できるとされています(民法1027条)。とはいえ、取消しまで進むのは最終手段であり、障害のある子本人が自ら声を上げるのは難しいのが実情です。

そこで欠かせないのが、遺言執行者の指定です。遺言の内容を実現する役割を担う人をあらかじめ決めておけば、財産の名義変更や負担の内容の伝達がスムーズに進みやすくなります。負担の内容は「毎月○万円を援助する」など、できるだけ具体的に書いておくと、受け取る側も実行しやすくなります。遺言に付言事項として親の想いを書き添えておくことも、きょうだいの納得感につながると考えられます。

遺言を補う仕組み:信託と成年後見の組み合わせ

「親の死後、何十年にもわたって少しずつお金を渡していきたい」という希望は、遺言だけでは実現しにくい部分です。この点を補う方法として、家族信託があります。親が委託者となり、信頼できるきょうだい等を受託者、障害のある子を受益者として、財産を管理しながら生活費や医療費に充てていく仕組みです。親が元気なうちに契約で始めておけば、親の認知症や死亡があっても財産管理を途切れさせずに続けやすいとされています。

信託銀行などが扱う「特定贈与信託」という制度もあります。障害のある方の生活の安定を目的に、親などが財産を信託する仕組みで、特別障害者は6,000万円、それ以外の特定障害者は3,000万円まで贈与税がかからないとされています(相続税法21条の4)。生前に使う制度のため、遺言とセットで早めに検討しておくことが大切です。

そして、財産管理だけでなく、福祉サービスの契約や施設入所の手続きなど、本人の暮らしを支える「身上保護」には成年後見制度が関わります。信託は財産を管理する仕組みであり、身上保護までは代わりにできない点に注意が必要です。親が元気なうちに、親自身が成年後見人となる申立てを検討し、親なき後の交代まで見据えておく方法も考えられます。なお、成年後見制度は2026年6月成立の民法改正で見直しが予定されていますが、施行はまだ先とされているため、現時点では現行制度を前提に準備を進めることになります。

チェックリスト

  • ☐ 親なき後に、障害のある子を支えてくれる家族・親族の候補を考えた。
  • ☐ 支える人に、どんな役割を、どの程度お願いしたいかを書き出している。
  • ☐ ほかの子どもの遺留分に配慮した財産の配分になっているか確認した。
  • ☐ 遺言執行者を誰にするか、家族や専門家と相談している。
  • ☐ 家族信託・特定贈与信託・成年後見のうち、わが家に合う仕組みを比べてみた。
  • ☐ 遺言の内容と親の想いを、支えてくれる家族に事前に伝えている。

Q. 障害のある子に財産を残すと、相続税は高くなりますか?

A. 相続人に障害のある方がいる場合、相続税の計算で「障害者控除」が使える場合があるとされています。控除額は年齢や障害の程度によって変わり、引ききれない分を扶養義務者の相続税から差し引ける仕組みもあります。詳しい計算や申告は税理士にご相談ください。

Q. 負担付遺贈と家族信託は、どちらか一方を選ぶものですか?

A. どちらか一方に限る必要はなく、組み合わせて使うことも考えられます。たとえば、自宅は信託で管理しつつ、それ以外の預金は負担付遺贈できょうだいに託すといった設計もあり得ます。ご家族の財産の内容や、支える人の負担の大きさを踏まえて検討することが大切です。

Q. 支えてくれる親族がいない場合はどうすればよいですか?

A. 親族に頼るのが難しい場合は、専門職による成年後見や、信託銀行の特定贈与信託などを中心に検討することになると考えられます。お住まいの地域の障害者相談支援の窓口や、社会福祉協議会に相談してみるのも一つの方法です。早めに情報を集めておくことで、選べる選択肢が広がります。

ワンポイントアドバイス: 親なき後の備えは、「遺言を書いたら終わり」ではありません。子どもの生活環境や支えてくれる家族の状況は、年月とともに変わっていきます。数年に一度は遺言や信託の内容を見直し、関わる家族と話し合う機会をつくることをおすすめします。整骨院の経営でご高齢の方やご家族と長く向き合ってきた経験を踏まえ、当相談室ではご家族のペースに合わせてゆっくりお話を伺っています。

まとめ

障害のある子の親なき後に備える遺言では、財産を多く残すことだけでなく、その財産を誰がどのように管理し、子の暮らしを支えていくかまで考える必要があります。遺言では負担付遺贈と遺言執行者の指定で支え手を明確にし、長期的な財産管理は家族信託や特定贈与信託で、身上保護は成年後見制度で補う、という組み合わせが一つの考え方です。ご家族ごとに最適な形は異なるため、親が元気なうちに少しずつ準備を始めましょう。

遺言書の文案づくりから家族信託の契約書まで、柏市の相談室にご相談ください

行政書士は、遺言書の文案作成や公正証書遺言作成のサポート、家族信託・任意後見契約書の文案作成、相続人の調査(戸籍収集)などを承っております。なお、成年後見の申立て手続きは司法書士・弁護士、信託に関する登記は司法書士、相続人間の交渉や遺留分をめぐる紛争は弁護士、相続税・贈与税の申告は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

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