賃貸マンションやアパートを所有し、将来の相続に備えている方から、税制改正の影響についてご質問をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。令和8年度税制改正法(2026年3月31日成立)により、相続税における貸付用不動産の評価方法が見直されるとされています。今回の改正で何が変わるのか、ポイントを整理します。
この記事の結論
- 被相続人等が相続開始前(または贈与前)5年以内に取得・新築した貸付用不動産は、通常の取引価額に相当する金額で評価することになるとされています。
- 通常の取引価額に相当する金額は、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した価額の80%相当額で評価できるとされています。
- この改正は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等により取得する財産の評価から適用されるとされ、現時点で既に5年を超えて保有している物件は原則対象外とされています。
相続対策・生前の財産整理のご相談を承ります
改正の背景、なぜ評価方法が見直されるのか
従来、現金や預貯金を賃貸用の不動産に組み替えることで、相続税評価額を圧縮する対策が広く行われてきたとされています。不動産の相続税評価額(路線価等にもとづく評価)は、実際の市場取引価格より低くなる傾向があるため、こうした評価差を利用した節税対策が過度に行われている実態が指摘されてきたとされています。令和8年度税制改正では、この評価差を利用した対策のうち、相続開始間際に取得された貸付用不動産を対象に、評価方法を市場実勢に近づける見直しが行われることになったとされています。
「5年以内取得」の対象不動産、評価方法の目安
今回の改正では、被相続人等が相続開始前(または贈与前)5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、相続開始時(または贈与時)における通常の取引価額に相当する金額によって評価することになるとされています。この通常の取引価額に相当する金額は、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した価額の80%相当額で評価できるとされ、従来の路線価等による評価より高い評価額になり得る点に注意が必要でしょう。
不動産小口化商品も対象に、適用時期はいつから
不動産特定共同事業契約や一定の信託受益権にもとづく権利の目的となっている貸付用不動産についても、取得時期を問わず通常の取引価額に相当する金額で評価することになるとされ、いわゆる不動産小口化商品も見直しの対象に含まれています。この改正は令和9年(2027年)1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得する財産の評価に適用されるとされ、それより前に発生した相続には影響しないとされています。
チェックリスト
- ☐ 所有している貸付用不動産の取得・新築時期を確認している。
- ☐ 相続開始前5年以内に取得した物件があるかを把握している。
- ☐ 不動産小口化商品を保有している場合、評価方法の変更対象になるかを確認している。
- ☐ 適用開始時期(令和9年1月1日以後の相続等)を把握している。
Q. すでに5年以上前に取得した賃貸不動産も評価方法が変わりますか?
A. 今回の改正は、相続開始前(または贈与前)5年以内に取得・新築した貸付用不動産が対象とされているため、それより前から保有している物件は原則としてこれまでどおりの評価方法になるとされています。
Q. 具体的な評価額の計算は自分でできますか?
A. 取得価額を基にした地価変動等の考慮や80%相当額の計算には専門的な判断が必要になるとされているため、税理士など専門家への相談をおすすめします。
ワンポイントアドバイス: これから賃貸不動産の購入による相続対策を検討している場合、取得時期と相続開始時期の間隔によって評価方法が変わり得る点を踏まえて計画することが大切です。相続税の試算は税理士、遺産分割や生前対策の全体設計は行政書士へと、役割を分けて相談するとスムーズでしょう。
まとめ
令和8年度税制改正により、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産は通常の取引価額に近い金額で評価されることになり、令和9年1月1日以後の相続等から適用されるとされています。既に賃貸不動産をお持ちの方、これから購入を検討している方は、取得時期と評価方法の関係を早めに確認しておくとよいでしょう。
相続対策・生前の財産整理はお気軽にご相談ください
行政書士は、相続税の申告そのものは税理士との連携が必要になりますが、遺産分割協議書の作成支援や、生前対策としての家族信託・遺言書作成のご相談を承っております。不動産を含めた財産全体の整理からサポートいたします。
参考URL
関連記事
- 自宅の土地、相続税評価額が80%減額に?|小規模宅地等の特例(330㎡)の要件を整理
- 相続税の申告は必要?いくらから?|基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)の計算方法


コメント