「亡くなった母が一人で住んでいた築40年の実家を売ることになった。自分は何十年も住んでいないので、雨漏りやシロアリがあるかどうか分からない。売った後に不具合が見つかったら責任を取らされるのか」というご相談をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。相続した不動産を売る場合でも、売主となるのは相続人ご自身です。そのため、売却後に建物の不具合が見つかると、売主として「契約不適合責任」を問われる可能性があるとされています。事前に押さえておきたいポイントを整理します。
この記事の結論
- 売却した建物が契約の内容に適合しない場合(雨漏り・シロアリ被害など)、売主は買主から修補・代金減額・損害賠償・契約解除を求められる可能性があるとされています(民法562条〜564条、2020年4月施行の改正民法)。
- 個人が売主の場合、「契約不適合責任を負わない」「責任を負う期間を引渡しから3か月に限る」といった特約は原則として有効とされています。
- ただし、売主が知りながら買主に告げなかった不具合については、特約があっても責任を免れないとされています(民法572条)。知っている不具合は正直に告知することが、最大のトラブル予防策です。
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契約不適合責任とは(旧・瑕疵担保責任)
2020年4月1日に施行された改正民法により、以前の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められたとされています。引き渡した建物が、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して次のような請求ができるとされています。
- 追完請求(雨漏りの修理など、不具合を直すよう求めること、民法562条)
- 代金減額請求(民法563条)
- 損害賠償請求・契約の解除(民法564条)
ポイントは、「契約書や告知の内容と比べて適合しているかどうか」で判断される点です。古い建物であることや、雨漏りの跡があることを契約書・告知書に明記し、買主が納得したうえで契約していれば、その点は契約不適合にあたりにくいと考えられています。
請求できる期間にも決まりがあります。建物の種類・品質に関する不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則として責任を追及できなくなるとされています(民法566条)。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合は、この期間制限は適用されないとされています。
免責特約はどこまで有効か
相続人など個人が売主となる場合、契約不適合責任を負わない旨の特約(免責特約)や、責任を負う期間を短くする特約は、原則として有効とされています。実務では、築年数の古い建物について「現況有姿・契約不適合責任免責」とする契約や、責任期間を「引渡しから3か月」程度に限る契約が多く見られます。
とはいえ、免責特約は万能ではありません。民法572条により、売主が不具合を知りながら買主に告げなかった場合には、特約があっても責任を免れないとされています。「雨漏りを知っていたが、売れにくくなるので黙っていた」というケースは、まさにこれにあたるおそれがあります。なお、売主が宅地建物取引業者である場合は宅地建物取引業法40条による制限がありますが、相続人が個人として売る場合は通常この制限は関係しないとされています。
住んでいなかった実家を売るときの備え方
相続した実家の場合、売主となる相続人自身が建物の状態を把握していないことが珍しくありません。こうした場合は、仲介する不動産会社から渡される「物件状況報告書(告知書)」や「付帯設備表」に、知っていることは正直に記入し、分からない点は「不明」と記載しておくことが大切です。生前にご両親から聞いていた修繕歴や、室内の雨染みなど自分で気づいた点は、些細に思えても書き出しておくと安心です。
建物の状態を客観的に確認したい場合は、専門家による建物状況調査(インスペクション)を利用する方法もあります。また、不動産会社が直接買い取る「買取」を選ぶと、免責特約付きで売却しやすい一方、仲介より売却価格が下がる傾向があるとされています。価格とリスクのバランスで検討するとよいでしょう。
見落としがちなのが、相続人が複数いる場合です。兄弟姉妹で共有名義にしてから売却すると、全員が売主になります。売却後に責任を問われた場合の負担割合を、遺産分割協議の段階で話し合っておくと、後々のもめごとを防ぎやすくなります。
チェックリスト
- ☐ 雨漏り・シロアリ・給排水管の不具合など、知っている不具合を書き出している。
- ☐ 物件状況報告書(告知書)に、分からない点は「不明」と正直に記入する予定である。
- ☐ 売買契約書の契約不適合責任の条項(免責か、期間を限定するか)を確認している。
- ☐ 必要に応じて建物状況調査(インスペクション)や買取も比較検討している。
- ☐ 相続人が複数の場合、売却後の責任や費用の負担割合を話し合っている。
Q. 本当に知らなかった不具合でも責任を負うのですか?
A. 契約不適合責任は、売主が不具合を知っていたかどうかにかかわらず問われ得るとされています。そのため、知らなかった不具合に備えるには、免責特約や責任期間を限定する特約を契約書に盛り込んでおくことが重要です。一方、知っていた不具合を告げなかった場合は、特約があっても責任を免れないとされています。
Q. 売る前に相続登記は必要ですか?
A. 買主へ所有権を移転する前提として、相続人名義への相続登記を済ませておく必要があるとされています。相続登記は2024年4月から義務化されているため、売却の予定がある場合も早めに遺産分割協議と登記の準備を進めることをおすすめします。
ワンポイントアドバイス: 実家の片付けの際に、リフォームや修理の領収書、シロアリ防除の保証書、建築時の図面などが見つかることがあります。捨てずに一式保管しておくと、告知書の記入や買主への説明に役立ち、売却後のトラブル予防にもつながります。
まとめ
相続した実家を売る場合も、売主である相続人は契約不適合責任を問われる可能性があるとされています。個人が売主であれば免責特約や期間を限定する特約は原則有効とされる一方、知っていた不具合を告げなかった場合は責任を免れないとされています。建物の状態が分からないときほど、正直な告知と契約条項の確認を丁寧に行うことが大切です。
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