賃貸アパートを相続すると、「入居者との賃貸借契約はそのまま引き継がれる」ということは比較的知られています。柏市の行政書士だいち法務事務所です。ところが見落とされがちなのが、オーナーと管理会社との間で結んでいる「管理委託契約」は、賃貸借契約とは別の扱いになり得るという点です。民法653条は、委任契約が当事者の死亡によって終了することを原則として定めているとされています。
この記事の結論
- 入居者とオーナーの間の賃貸借契約は、相続により相続人へ当然に引き継がれるとされています。
- 一方、オーナーと管理会社の間の管理委託契約は「委任」の性質を持つことが多く、民法653条により委任者(オーナー)の死亡で原則終了するとされています。
- 実務上は契約書に存続に関する特約があるかどうかで扱いが変わり得るため、契約書の確認と管理会社への早めの連絡が重要とされています。
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賃貸借契約と管理委託契約は別物という前提
相続した収益物件には、性質の異なる2つの契約が存在しています。1つは入居者との「賃貸借契約」で、こちらは既存記事「相続した貸家の入居者、そのまま住まわせていい?」でも解説したとおり、オーナーの地位ごと相続人へ当然に承継されるとされています。もう1つが、家賃回収や入居者対応、清掃・修繕の手配などを管理会社に任せる「管理委託契約」です。この管理委託契約は、法的には「委任」または「準委任」に分類されることが多く、賃貸借契約とは異なる終了ルールが適用され得るとされています。
民法653条「委任者の死亡による終了」の原則
民法653条は、委任は委任者または受任者の死亡によって終了する事由の一つとして定めているとされています。この規定をそのまま当てはめると、アパートのオーナー(委任者)が亡くなった時点で、管理会社との管理委託契約は原則として終了することになると考えられています。もっとも、この規定は任意規定と解されており、契約書に「委任者が死亡しても契約は終了せず、相続人がその地位を承継する」といった特約が定められていれば、その特約が優先されるとされています。実務上、多くの管理委託契約書にはこうした承継に関する条項が置かれていることもありますが、契約書ごとに内容が異なるため、実際にどう定められているかは個別に確認する必要があります。
相続人が実際にとるべき対応
管理委託契約の帰すうにかかわらず、相続が発生したら早めに管理会社へ連絡することが重要だと考えられています。連絡が遅れると、家賃の振込先口座が旧名義のまま変更されなかったり、入居者からの問い合わせ・修繕対応の窓口が宙に浮いてしまったりするリスクがあるためです。あわせて、既存の管理委託契約書の内容(存続条項の有無)を確認し、必要であれば相続人名義で契約を結び直す手続きを進めることになります。相続登記(名義変更)が完了していない段階でも、管理会社側の判断で暫定的な対応が可能なケースもあるため、まずは早めの連絡・相談を心がけることが望ましいとされています。
チェックリスト
- ☐ 相続した物件の管理会社に相続発生の連絡をしている。
- ☐ 既存の管理委託契約書に、委任者死亡時の存続に関する条項があるか確認している。
- ☐ 家賃の振込先口座を相続人名義に変更する必要があるかを把握している。
- ☐ 相続登記(名義変更)の見通しを管理会社と共有している。
Q. 管理会社への連絡が遅れると、家賃はどうなりますか?
A. 管理会社が旧オーナー名義の口座への振込を続けてしまう、あるいは対応の窓口が定まらず入居者対応が滞る、といった事態が起こり得るとされています。遺産分割が確定する前であっても、相続発生の事実だけは早めに管理会社へ伝えておくことが望ましいと考えられています。
Q. 管理会社を変更したい場合、相続のタイミングで切り替えても大丈夫ですか?
A. 相続をきっかけに管理会社を見直すこと自体は可能とされていますが、既存の管理委託契約に解約予告期間や違約金の定めがある場合があるため、現行契約の内容を確認したうえで進めることが望ましいと考えられています。
ワンポイントアドバイス: 賃貸借契約は自動的に引き継がれるからと安心して、管理委託契約の確認を後回しにしてしまうケースが見受けられます。相続が発生したら、まず管理委託契約書を探し出し、存続条項の有無を確認するところから始めることをおすすめします。
まとめ
入居者との賃貸借契約が当然に相続されるのに対し、オーナーと管理会社との管理委託契約は民法653条により原則として死亡時に終了し得るという違いがあります。実際の扱いは契約書の条項によって左右されるため、収益物件を相続した際は早めに契約書を確認し、管理会社への連絡・必要な契約の結び直しを進めることが大切です。
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