「父が耕していた家の裏の畑、固定資産税の書類を見たら『生産緑地』と書いてありました。誰も農業を継がないので売りたいのですが、できますか」。市街化区域の中に農地が点在する柏市周辺では、このようなご相談をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。結論からお伝えすると、生産緑地は相続しただけでは指定が外れず、そのままでは家を建てたり宅地として売ったりすることは原則としてできません。ただし、農業の中心となっていた方(主たる従事者)が亡くなった場合には、市に対して「買取り申出」を行うことができ、所定の手続きを経れば建築などの制限が解除される道があります。
この記事の結論
- 生産緑地は農地として維持することが前提の土地で、相続しても指定は自動的には外れません。建物の建築や宅地造成には原則として市長の許可が必要で、許可はほとんど認められないとされています。
- 主たる従事者の死亡は、生産緑地法10条の買取り申出ができる理由の一つです。特定生産緑地に指定されている土地でも、死亡を理由とする申出は可能とされています。
- 申出から3か月以内に買取りなどで所有権が移らなければ、行為の制限が解除されます(生産緑地法14条)。ただし、相続税の納税猶予を受けていると猶予が打ち切られるなど、税金面の影響が大きいため、申出の前に確認が欠かせません。
相続した畑をどうするか、手続きの順番から一緒に整理しませんか
生産緑地とは?相続しても指定は外れない
生産緑地は、市街化区域内の農地のうち、良好な都市環境を守るために都市計画で指定された農地です。指定を受けると、固定資産税が農地として低く抑えられるなどの優遇がある一方で、農地として管理し続ける義務を負い、建物の建築や宅地造成などには市町村長の許可が必要になります。この許可は、農業用の施設などに限られるのが一般的です。
相続が起きても、この指定はそのまま土地に残ります。相続人が農業を続けない場合でも同じで、指定を外すには、次にご説明する買取り申出の手続きを踏む必要があります。全国的には1992年(平成4年)に指定された生産緑地が多く、指定から30年を迎える前に「特定生産緑地」に指定し直されて、優遇と制限が10年延長されている土地も少なくありません。
主たる従事者の死亡と買取り申出の流れ
生産緑地法10条では、指定から30年が経過した場合のほか、農業の主たる従事者が死亡した場合や、農業に従事できなくなる故障を負った場合に、土地の所有者が市町村長に対して買い取るよう申し出ることができると定められています。特定生産緑地の場合、延長された10年間は30年経過を理由とする申出はできませんが、主たる従事者の死亡や故障による申出は可能とされています。
手続きのおおまかな流れは次のとおりです。
- 農業委員会で、亡くなった方が「主たる従事者」であったことの証明書を取得する
- 相続人が土地を取得したうえで、市に買取り申出書を提出する(戸籍などの添付書類が必要)
- 市が買い取るかどうかを判断し、買い取らない場合は、農業を営む方などへの取得のあっせんが行われる
- 申出の日から3か月以内に所有権が移転しなければ、行為の制限が解除される(生産緑地法14条)
実際には、市が買い取るケースは多くないとされており、制限が解除されたのちに、宅地としての売却や活用を検討する流れになることが一般的です。制限解除後に宅地へ転用する際は、市街化区域内の農地として農業委員会への農地転用の届出も必要になります。なお、申出には相続人が土地の所有者として確定していることが前提になるため、遺産分割協議と相続登記を早めに済ませておくことが大切です。
相続税の納税猶予と固定資産税への影響
生産緑地を相続した相続人が農業を続ける場合には、農地等の相続税の納税猶予の特例を受けられる可能性があります。柏市のように三大都市圏の特定市にある生産緑地の場合、猶予された相続税が免除されるには、原則として相続人が亡くなるまで農業を続ける(終身営農)ことが求められるとされています。
納税猶予を受けた後に買取り申出をすると、猶予が打ち切られ、猶予されていた相続税に利子税を加えて納めなければならなくなります。また、制限が解除されると固定資産税は宅地並みの課税に切り替わり、税負担が大きく増える可能性があります。「売るか、農業を続けるか」は、相続税の申告期限(10か月)までに判断が必要になる場面も多いため、税理士と早めに相談しておきましょう。
チェックリスト
- ☐ 固定資産税の課税明細書や市の都市計画図で、生産緑地かどうかを確認した。
- ☐ 特定生産緑地に指定されているかどうかを、市の担当窓口で確かめた。
- ☐ 亡くなった方が農業の主たる従事者だったかを、農業委員会に相談した。
- ☐ 相続人の中に、農業を続ける意思のある人がいるかを話し合った。
- ☐ 相続税の納税猶予を受けるか、買取り申出をするかの方針を税理士と検討した。
- ☐ 遺産分割協議と相続登記のスケジュールを立てた。
- ☐ 農地を相続したことの農業委員会への届出(相続を知った時からおおむね10か月以内)を済ませた。
Q. 生産緑地のまま、ほかの人に売ることはできますか?
A. 生産緑地のままでも売買そのものは可能とされていますが、買主も農地として管理する義務と建築制限を引き継ぎます。また、農地の売買には農地法の許可などが必要になるため、買い手は実際には農業を営む方に限られることが多いと考えられます。
Q. 亡くなった親が畑を貸していて、自分では耕していなかった場合も買取り申出はできますか?
A. 買取り申出の理由になるのは「主たる従事者」の死亡です。主たる従事者は、その方が従事できなくなると農業経営が客観的に続けられなくなる人を指し、世帯主に限られないとされています。親が実際に耕していなかった場合は、親の死亡を理由とする申出が認められない可能性もあるため、事前に市や農業委員会へ確認することが大切です。
Q. 制限が解除されたら、すぐに家を建てられますか?
A. 行為の制限が解除されれば、生産緑地法による建築の制限はなくなります。もっとも、宅地として使うには農地転用の届出が必要で、道路との接し方や上下水道の整備状況などによっては別途の手続きや費用がかかる場合もあります。土地の状況を確認したうえで計画を立てましょう。
ワンポイントアドバイス: 生産緑地の相続では、都市計画(市の担当課)、農地(農業委員会)、税金(税務署・市の資産税担当)と、相談先が分かれるのが悩ましいところです。柏市内の土地であれば、まず市の都市計画担当で生産緑地・特定生産緑地の指定状況を確認し、そのうえで農業委員会への届出や証明の手続きへ進むと、全体の流れがつかみやすくなります。
まとめ
亡くなった親の畑が生産緑地だった場合、相続しただけでは指定は外れず、宅地としての売却や建築は原則としてできません。主たる従事者が亡くなったときは生産緑地法10条の買取り申出が可能で、申出から3か月以内に所有権が移らなければ制限が解除されます。一方で、相続税の納税猶予の打ち切りや固定資産税の増加など、税金への影響も大きいため、農業を続けるか手放すかの方針を早めに家族で話し合い、専門家と相談しながら進めていきましょう。
農業委員会への届出書類や遺産分割協議書の作成は、柏市の相談室がサポートします
行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、遺産分割協議書の作成、農業委員会への届出書類や農地転用の届出書類の作成など、官公署に提出する書類の作成を承っております。なお、相続税の申告や納税猶予の手続きは税理士、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続人間の紛争対応は弁護士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
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