「相続した実家を解体して土地を売ったところ、買主さんが家を建てようと掘ったら、昔の建物の基礎や瓦のかけらがたくさん出てきたそうです。撤去費用を請求すると言われましたが、私たちは全く知りませんでした」。こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。古くから家が建っていた土地では、地中に以前の建物の基礎や浄化槽、井戸、がれきなどが残っていることがあります。今回は、相続した土地を売るときに知っておきたい「地中埋設物」と、売主の責任・費用負担の考え方を整理します。
この記事の結論
- 建物を建てる妨げになる程度の地中埋設物がある場合、売主は契約不適合責任(民法562条以下)を問われ、撤去費用の負担や代金の減額などを求められる可能性があります。地中に何かがあるだけで、直ちに責任が生じるわけではないとされています。
- 個人が売主の場合、契約不適合責任を負わない旨の特約(免責特約)は原則として有効とされています。ただし、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、責任を免れません(民法572条)。
- 相続した土地は、売主自身が過去の経緯を知らないことも多いため、解体時の記録の保存や告知書への正確な記載、契約書での費用負担の取り決めが、トラブルを防ぐ鍵になります。
相続した土地の売却前に、気をつけたい点を一緒に確認しませんか
地中埋設物とは?相続した土地で見つかりやすいもの
地中埋設物とは、土地の地中に残っている人工物のことです。相続した実家の土地で見つかりやすいのは、さらに古い時代の建物の基礎やくい、使われなくなった浄化槽、埋め戻された井戸、解体時のコンクリートがらや瓦のかけらなどです。下水道が整備される前に建てられた家では、浄化槽がそのまま地中に残されていることも少なくありません。
親の代、あるいはそれ以前に建て替えをしている場合、相続人は前の建物がどのように取り壊されたかを知らないことがほとんどです。解体業者に依頼して建物を取り壊しても、地表から見える部分だけが撤去され、地中の基礎は残ったままになっている例もあるとされています。買主が新築工事のために掘削して、初めて見つかるケースが多いのはこのためです。
売主はどこまで責任を負う?契約不適合責任と免責特約
売買した土地が契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して、撤去などの追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められるとされています(民法562条〜564条)。地中埋設物については、建物の建築に支障がある程度の質・量で、取り除くために特別な工事が必要になるかといった観点から、契約不適合にあたるかどうかが判断されると考えられます。小さな石やわずかな破片がある程度では、責任が認められないこともあります。
買主は、契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、原則として責任を追及できなくなるとされています(民法566条)。また、個人どうしの売買では、「売主は契約不適合責任を負わない」「引渡しから3か月に限る」といった特約を結ぶことも認められています。もっとも、売主が埋設物の存在を知りながら告げなかった場合には、特約があっても責任を免れません(民法572条)。
契約書に「建物を解体・撤去して引き渡す」と定めていた場合などは、特約があっても埋設物の撤去が売主の義務と判断されることがあります。事実と異なる説明をすれば、説明義務違反を問われるおそれもあります。相続人が複数いて共有名義で売る場合は、全員が売主になるため、責任や費用を誰がどう負担するかも事前に話し合っておきたいところです。
トラブルを防ぐために売却前にできること
第一に、建物を解体する段階で、地中の基礎や浄化槽まで撤去する内容になっているかを見積書で確認しましょう。工事中や工事後の写真、解体業者の作業記録を残しておくと、後から問い合わせを受けたときの説明材料になります。
次に、売却時に作成する告知書(物件状況報告書)には、知っている範囲の事実を正確に書くことが大切です。古い住宅地図や閉鎖登記簿で以前の建物の有無を調べたり、親族に昔の建て替えの様子を聞いたりすることで、手がかりが得られる場合があります。分からないことは「不明」と正直に書き、推測で「なし」と書かないようにしましょう。
埋設物の可能性が高い土地では、売却前に試掘や地中探査を行う方法もあります。費用はかかりますが、結果を買主に示せば、価格交渉や契約条件を決めやすくなります。不動産会社に直接買い取ってもらう方法を選ぶと、現状のまま引き渡す条件で合意しやすい傾向がありますが、その分価格は下がりやすいため、仲介での売却と比べて検討するとよいでしょう。
チェックリスト
- ☐ 解体工事の見積書で、地中の基礎や浄化槽の撤去が含まれているか確認した。
- ☐ 解体工事の写真や業者の作業記録を保管している。
- ☐ 以前の建物の有無を、古い住宅地図や閉鎖登記簿で調べた。
- ☐ 浄化槽や井戸を使っていた時期がないか、親族に聞き取りをした。
- ☐ 告知書には、知っている事実だけを書き、分からない点は「不明」とした。
- ☐ 契約書の免責特約や撤去費用の負担について、相続人全員で内容を共有した。
Q. 相続した土地なので、埋設物があることを本当に知りませんでした。それでも責任を負いますか?
A. 契約不適合責任は、売主が埋設物の存在を知っていたかどうかに関係なく問題になり得るとされています。ただし、免責特約を結んでいれば、知らなかった埋設物について責任を負わない扱いになるのが原則です。知らなかったことを説明できるよう、告知書の記載や解体時の記録を整えておくことが大切です。
Q. 地中埋設物の撤去費用は、どのくらいかかりますか?
A. 埋設物の種類・量・深さ、重機が入れるかどうかなどによって大きく異なるため、一概には言えません。実際の金額は、解体業者などに現地を確認してもらい、見積もりを取って判断することになります。売却前に把握しておけば、価格交渉や契約条件に反映させることもできます。
Q. 古い井戸を埋めるときに、特別な手続きは必要ですか?
A. 井戸の埋め戻しについて、一般の住宅で全国一律の届出が必要とされているわけではありませんが、自治体によっては取扱いを定めている場合もあります。地域の慣習としてお祓いをする方もいらっしゃいます。埋め戻しの方法によっては地盤に影響が出ることもあるため、解体業者とよく相談し、作業の記録を残しておきましょう。
ワンポイントアドバイス: 相続した土地の売却では、「知らないことを、知らないまま売らない」ことがトラブル防止の第一歩です。解体・調査・告知書・契約書のどこで何を確認するかを、売却活動の前に整理しておくと安心です。元不動産業の経験を持つ当相談室では、売却前の確認事項の整理や、相続人間の取り決めの文書化をお手伝いしています。
まとめ
相続した土地の地中から古い基礎やがれきなどが見つかった場合、建物の建築に支障がある程度のものであれば、売主は契約不適合責任を問われる可能性があります。個人が売主であれば免責特約は原則有効とされていますが、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。解体時の記録を残し、告知書には事実を正確に書き、契約書で費用負担を明確にしておくことで、売却後のトラブルを防ぎやすくなります。相続人全員で情報を共有しながら、納得のいく売却を目指しましょう。
相続した不動産の売却準備と相続人間の取り決めを、柏市の相談室が整理します
行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、遺産分割協議書(換価分割の取り決めを含む)の作成、官公署に提出する書類の作成などを承っております。なお、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、建物の滅失登記は土地家屋調査士、売却に伴う譲渡所得の申告は税理士、買主との紛争の交渉や訴訟の代理は弁護士、売買の仲介は宅地建物取引業者の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
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