「在職中に夫が亡くなり、会社から死亡退職金を支給すると連絡がありました。これは遺産として子どもたちと分けるものなのでしょうか。相続税もかかるのでしょうか」。突然の連絡に、どう受け止めればよいか戸惑う方は多いようです。こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。死亡退職金は、預貯金などの一般的な遺産とは扱いが異なる点がいくつかあります。今回は、死亡退職金を誰が受け取るのか、遺産分割の対象になるのか、そして相続税の非課税枠の計算方法を整理します。
この記事の結論
- 死亡退職金の受取人は、勤務先の退職金規程で定められていることが多く、その場合は受取人固有の権利として、原則として遺産分割の対象にならないと考えられています。
- 相続税の計算では「みなし相続財産」として扱われ、亡くなってから3年以内に支給額が確定したものが対象になるとされています。
- 相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税とされ、生命保険金の非課税枠とは別に使えます。
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死亡退職金は誰のもの?受取人は退職金規程で決まることが多い
会社員や公務員が在職中に亡くなると、勤務先から遺族に死亡退職金が支給されることがあります。誰が受け取るかは、民法の相続のルールではなく、まず勤務先の退職金規程(就業規則)の定めによって決まるのが一般的です。多くの規程では、配偶者を第一順位とし、子、父母などの順に受取人を定めています。
最高裁昭和55年11月27日判決は、規程で受取人の順位が定められていた事案で、死亡退職金は受取人である遺族が自分の固有の権利として受け取るもので、相続財産には含まれないと判断したとされています。公務員の場合も、退職手当に関する法令で遺族の範囲と順位が定められています。
このため、規程に受取人の定めがある場合、死亡退職金は原則として遺産分割協議で分ける対象にはならず、相続放棄をした人でも受取人として受け取れることがあると考えられます。一方で、規程に受取人の定めがない場合は、相続財産として遺産分割の対象になり得るとする見解もあります。まずは勤務先に規程の内容を確認することが出発点です。
相続税では「みなし相続財産」、3年以内に支給が確定したものが対象
遺産分割の場面では受取人固有の財産とされる一方、相続税の計算では、死亡退職金は「みなし相続財産」として課税の対象になるとされています(相続税法3条)。対象となるのは、亡くなった方の退職手当金などで、死亡後3年以内に支給額が確定したものです。在職中に亡くなった場合だけでなく、生前に退職していて、退職金の額が死亡後3年以内に確定した場合も含まれるとされています。
支給額の確定が死亡後3年を過ぎた場合は、相続税ではなく、受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になると考えられています。どちらの税金の対象になるかで手続きが変わるため、支給が確定した時期は書面で確認しておくと安心です。
なお、死亡退職金とは別に、勤務先から弔慰金や花輪代などが支給されることもあります。業務上の死亡であれば普通給与の3年分、業務外の死亡であれば普通給与の半年分に相当する額までは弔慰金として相続税の対象外とされ、それを超える部分は死亡退職金として扱われるとされています。
非課税枠は「500万円×法定相続人の数」、計算の注意点
相続人が死亡退職金を受け取った場合、全員の受取額の合計のうち「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかからないとされています(相続税法12条)。たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人なら、非課税限度額は1,500万円です。死亡退職金が2,000万円であれば、1,500万円を差し引いた500万円が相続税の計算に含まれることになります。
計算にあたって押さえておきたい点は、次のとおりです。
- 法定相続人の数には、相続放棄をした人も含めて数えるとされています。
- 養子がいる場合、数に含められるのは実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までとされています。
- 相続放棄をした人や相続人以外の人が受け取った場合、その人には非課税枠が適用されないとされています。
- 非課税限度額は、相続人それぞれの受取額の割合に応じて按分します。
生命保険金にも同じ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、死亡退職金の非課税枠とは別枠として、それぞれ適用できるとされています。もっとも、非課税枠を差し引いた後の金額は、預貯金や不動産などほかの遺産と合算されるため、遺産全体が基礎控除を超えるかどうかの確認は欠かせません。
チェックリスト
- ☐ 勤務先の退職金規程で、死亡退職金の受取人と順位を確認した。
- ☐ 支給額が確定した日(死亡後3年以内かどうか)を書面で把握している。
- ☐ 死亡退職金と弔慰金がそれぞれいくら支給されたかを分けて整理した。
- ☐ 法定相続人の数(相続放棄をした人・養子の数の制限を含む)を確認した。
- ☐ 生命保険金の受取額もあわせて一覧にしている。
- ☐ 遺産全体が相続税の基礎控除を超えそうか、おおまかに試算した。
Q. 相続放棄をしても、死亡退職金は受け取れますか?
A. 退職金規程で受取人として定められている場合、死亡退職金は受取人固有の権利とされるため、相続放棄をしていても受け取れることがあると考えられます。ただし、相続税の計算では非課税枠を使えない点に注意が必要です。規程に受取人の定めがない場合は扱いが異なり得るため、事前に確認しましょう。
Q. 死亡退職金を受け取ったら、ほかの遺産の分け方に影響しますか?
A. 原則として遺産分割の対象外とされるため、受け取った死亡退職金を差し引いて分ける必要はないと考えられます。もっとも、受取額が遺産全体に比べて非常に大きいなど、相続人間の公平が問題になる場面もあり得ます。話し合いの際は、死亡退職金の額も含めて全体像を共有しておくとよいでしょう。
Q. 生前に退職して、退職金をすでに受け取っていた場合はどうなりますか?
A. 生前に受け取った退職金は、死亡退職金ではありません。受け取った後のお金は、残っていれば預貯金などとして通常の遺産に含まれることになります。死亡後に支給額が確定した退職金だけが、みなし相続財産の対象になるとされています。
ワンポイントアドバイス: 勤務先からの死亡退職金の案内は、葬儀直後の慌ただしい時期に届くことが多いものです。支給通知書や振込の明細、退職金規程の写しは、相続税の申告や遺産分割の話し合いで必要になることがあるため、ほかの相続関係の書類と一緒に保管しておきましょう。相続人の確定や財産の一覧づくりは、相談室でもお手伝いできます。
まとめ
死亡退職金は、勤務先の規程で受取人が定められていれば受取人固有の権利とされ、原則として遺産分割の対象にはならないと考えられています。一方、相続税ではみなし相続財産として扱われ、死亡後3年以内に支給額が確定したものが対象です。相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、生命保険金の非課税枠とは別に使えます。規程の内容と支給の時期を確認したうえで、遺産全体の整理を進めていきましょう。
相続財産の全体像の整理から、柏市の相談室がサポートします
行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、相続財産の調査のサポートや財産目録の作成、遺産分割協議書の作成などを承っております。なお、相続税の申告や税額の具体的な計算は税理士、相続放棄の手続きは司法書士・弁護士、相続人間の交渉・訴訟は弁護士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
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