こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。親が亡くなる前に入院や手術が続き、医療費の支払いがかさんだというご家族は少なくありません。葬儀や役所の手続きが一段落したころ、亡くなった親宛てに「高額療養費の支給申請書」が届き、「本人はもういないのに、誰が手続きをするの?」と戸惑われる方もいらっしゃいます。(参考例)申請書を「もう関係ない書類」と思って処分してしまい、後から払い戻しの対象だったと気づいた、というケースは珍しくありません。今回は、亡くなった方の高額療養費を相続人が請求する方法と、期限・相続税での扱いを整理します。
この記事の結論
- 亡くなった方が生前に支払った医療費が自己負担限度額を超えていた場合、その払い戻し(高額療養費)は、相続人が請求できるとされています。
- 請求できる期間は、原則として診療を受けた月の翌月1日から2年とされています。死亡後に支給申請書が届いたら、処分せずに早めに手続きしましょう。
- 亡くなった後に支給される高額療養費は、相続財産として遺産分割や相続税の対象になると考えられます。相続放棄を考えている場合は、受け取る前に慎重な判断が必要です。
親が亡くなった後の手続き、何が残っているか一緒に確認します
高額療養費とは?亡くなった後でも払い戻しの対象になる
高額療養費は、1か月(月の1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。たとえば69歳以下で一般的な所得区分(年収約370万〜約770万円)の方であれば、上限額は「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」とされています。
この払い戻しを受ける権利は、ご本人が亡くなっても消えるわけではありません。生前に支払った医療費について払い戻しが発生していれば、その権利は相続人に引き継がれ、相続人が請求することになるとされています。入院が長引いた月や、亡くなる直前の月の医療費が対象になることが多いと考えられます。
あわせて覚えておきたいのが、加入していた医療保険によって請求先が異なる点です。75歳以上の方は後期高齢者医療制度(千葉県では千葉県後期高齢者医療広域連合)、国民健康保険の方は住所地の市区町村、会社員などの方は協会けんぽや健康保険組合が窓口となります。柏市にお住まいだった方で、国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合は、柏市役所の担当窓口で手続きを案内してもらえます。
相続人が請求するときの流れと必要書類
支給の対象になると、診療月から数か月後に、亡くなった方宛てに支給申請書(お知らせ)が届くのが一般的です。生前に振込口座を登録していた場合でも、死亡後は口座が凍結されたり、登録の効力がなくなったりするため、あらためて相続人からの申請が必要になる場合があります。
申請の際に求められることが多い書類は、次のとおりです(保険者によって異なります)。
- 高額療養費の支給申請書(相続人が申請者として記入)
- 亡くなった方と申請する相続人との関係が分かる戸籍謄本など
- 申請する相続人の本人確認書類と、振込先口座が分かるもの
- 医療機関の領収書(求められた場合)
- 相続人が複数いる場合の、代表者への受領を承諾する書類(求められた場合)
請求できる期間は、原則として診療を受けた月の翌月1日から2年とされています(窓口での支払いが後になった場合は、支払った日の翌日から数えるとされています)。2年を過ぎると時効により請求できなくなるため、申請書が届いたら後回しにせず、ほかの死亡後の手続きとあわせて進めておくと安心です。なお、介護保険サービスの自己負担が上限を超えた場合の「高額介護サービス費」も、同じように相続人が請求できる場合があります。
相続税・準確定申告・相続放棄との関係
亡くなった後に支給が決まった高額療養費は、亡くなった方が持っていた「払い戻しを受ける権利」が形を変えたものと考えられるため、相続財産として扱われます。遺産分割協議の対象になるほか、相続税の申告が必要な場合は、相続財産に含めて計算することになると考えられます。一方で、亡くなった時点で未払いだった入院費などは、相続税の計算上、債務として差し引ける場合があります。
準確定申告で医療費控除を受ける場合にも注意が必要です。医療費控除の金額は、支払った医療費から高額療養費などで補てんされる金額を差し引いて計算するとされています。払い戻しの額が確定していない場合でも、見込み額を差し引いて計算することになるため、申告前に支給額を確認しておくとスムーズです。
相続放棄を考えている方は、さらに慎重な判断が求められます。相続財産である払い戻し金を受け取って使ってしまうと、相続を承認したとみなされる「法定単純承認」にあたるおそれがあるためです。借金が多いなど放棄の可能性がある場合は、申請や受け取りの前に、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
チェックリスト
- ☐ 亡くなった方が加入していた医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療・健康保険)を確認した。
- ☐ 亡くなった方宛てに届いた支給申請書・お知らせを捨てずに保管している。
- ☐ 入院・手術があった月の医療機関の領収書をまとめた。
- ☐ 申請する相続人と、亡くなった方との関係が分かる戸籍謄本を用意した。
- ☐ 診療月の翌月1日から2年という請求期限を把握している。
- ☐ 受け取った払い戻し金を、遺産分割協議の対象に含めることを相続人間で共有した。
- ☐ 相続放棄の可能性がある場合、受け取る前に専門家へ相談するかを検討した。
Q. 親の死後に届いた高額療養費の申請書、宛名が親本人でも手続きできますか?
A. 亡くなった方宛てに届いた申請書でも、相続人が申請者として手続きできるとされています。記入方法や必要書類は保険者ごとに異なるため、柏市の国民健康保険・後期高齢者医療の場合は柏市役所の担当窓口に、健康保険の場合は加入していた協会けんぽ・健康保険組合に確認するとよいでしょう。
Q. 相続人が兄弟3人いる場合、全員で申請しなければいけませんか?
A. 実務上は、相続人の代表者1人が申請し、ほかの相続人の承諾書などを添えて手続きする形が多いと考えられます。もっとも、受け取ったお金は相続財産にあたるため、代表者が受け取った後は、遺産分割協議の内容に沿って分けることになります。
Q. 亡くなってから2年以上たっていますが、もう請求できませんか?
A. 高額療養費の請求権は、原則として診療月の翌月1日から2年で時効により消滅するとされています。ただし、医療費を支払った時期などによって起算日が変わる場合もあるため、あきらめる前に一度、加入していた保険者に問い合わせてみることをおすすめします。
ワンポイントアドバイス: 高額療養費のように、亡くなった後に「お知らせ」が届いて初めて分かるお金は意外と多くあります。葬祭費・埋葬料、未支給年金、住民税の還付なども同じ時期に重なりやすいため、届いた郵便物は1つの箱にまとめておき、期限の早いものから片付けていくのがおすすめです。当事務所では、戸籍の収集から遺産分割協議書の作成まで、残っている手続きの整理をお手伝いしています。
まとめ
亡くなった方が生前に支払った医療費が自己負担限度額を超えていれば、高額療養費として相続人が払い戻しを請求できるとされています。期限は原則として診療月の翌月1日から2年のため、支給申請書が届いたら早めの手続きが大切です。受け取った払い戻し金は相続財産として遺産分割や相続税の対象になり、準確定申告の医療費控除の計算にも影響します。相続放棄を考えている場合は、受け取る前に専門家へ相談し、柏市役所など加入先の窓口で必要書類を確認しながら進めましょう。
戸籍集めや手続きの整理に困ったら、柏市の相談室へ
行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、遺産分割協議書の作成、官公署に提出する書類の作成などを承っております。なお、相続税・準確定申告の申告や税額の個別の判断は税理士、相続放棄の申述は司法書士・弁護士、相続人間の交渉・訴訟は弁護士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
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