「お世話になった友人に、特定の財産ではなく『財産の3割を譲る』という遺言を残したい。その友人は相続人と同じ扱いになるのか」というご質問をいただくことがあります。柏市の行政書士だいち法務事務所です。特定の財産を指定するのではなく、遺産全体に対する割合を示して財産を譲る遺言を「包括遺贈」といい、それを受け取る人を「包括受遺者」と呼ぶとされています。民法990条は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有すると定めており、思った以上に重い立場になる点に注意が必要です。
この記事の結論
- 包括遺贈とは、「全財産の3割を譲る」のように、遺産の全部または一部を割合で示して行う遺贈であり、対象財産を特定する「特定遺贈」とは区別されるとされています。
- 民法990条により、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされ、遺産分割協議への参加や、割合に応じた借金などの消極財産の承継も必要になるとされています。
- もっとも、包括受遺者は「相続人と同一の権利義務」を持つに留まり、遺留分や代襲相続の対象にはならないとされ、相続税の計算でも一親等の血族・配偶者でなければ2割加算の対象になり得るとされています。
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包括遺贈と特定遺贈、まず違いを整理する
遺贈には大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があるとされています。包括遺贈は「全財産の3割をAに遺贈する」のように、遺産全体に対する割合を示して財産を譲る方法です。これに対して特定遺贈は「〇〇銀行の預金をAに遺贈する」のように、対象となる財産そのものを具体的に指定する方法とされています。同じ「遺贈」という言葉でも、受け取る側の立場は大きく異なります。特定遺贈を受けた人(特定受遺者)は指定された財産だけを受け取ればよいのに対し、包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、財産全体に対する割合的な地位を承継することになります。
包括受遺者は相続人と何が同じで、何が違うのか
民法990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定めているとされています。これは、包括遺贈が遺産を割合的に承継させるという点で相続人の指定に近い性質を持つためとされています。具体的には、包括受遺者は遺産分割協議に参加する権利義務を持ち、預貯金や不動産だけでなく、借金などの消極財産も指定された割合に応じて承継するとされています。もっとも、包括受遺者はあくまで相続人と「同一の権利義務」を取得するに留まり、相続人そのものになるわけではないとされています。そのため、遺留分は認められず、包括受遺者が遺言者より先に死亡していた場合の代襲相続も生じないとされています。
割合で財産を受け取る際に気をつけたいこと
包括遺贈を受けた側が特に注意したいのが、消極財産(借金)も同じ割合で引き継ぐことになる点です。財産の内容をよく調べないまま受け入れると、想定外の負担を背負うことにもなりかねません。包括受遺者も、相続人の相続放棄・限定承認と同様に、自己のために包括遺贈があったことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所で放棄の申述をすることができるとされています(民法990条による915条等の準用)。また、税務面では、包括受遺者が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)や配偶者でない場合、相続税額に2割相当額が加算される「相続税額の2割加算」の対象になるとされています。財産を割合で譲る遺言を作成する際は、こうした点もあらかじめ伝えておくと、受遺者とのトラブルを避けやすいと考えられます。
チェックリスト
- ☐ 遺言に記載する割合が、遺産全体のうちどの程度かを明確にしている。
- ☐ 借金などの消極財産も同じ割合で引き継ぐことを、受遺者に伝えている。
- ☐ 包括受遺者が相続人以外の場合、相続税の2割加算の対象になり得ることを把握している。
- ☐ 遺産分割協議への参加が必要になる旨を、あらかじめ説明している。
Q. 包括受遺者は遺産分割協議に参加しなければなりませんか?
A. 包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされ、遺産分割協議に参加する必要があるとされています。他の相続人だけで協議を進めてしまうと、後日その協議が無効と判断されるおそれもあるため注意が必要です。
Q. 包括遺贈を受けたものの、借金の方が多そうです。放棄はできますか?
A. 包括受遺者も、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で放棄の申述をすることができるとされています。判断を先延ばしにせず、早めに財産と債務の内容を確認することが大切です。
ワンポイントアドバイス: 包括遺贈を用いる場合は、財産だけでなく債務も割合的に承継される仕組みであることを、遺言書の付言事項などで説明しておくと、受遺者が状況を理解しやすくなります。特定の財産だけを確実に渡したい場合は、特定遺贈を選ぶ方法も検討するとよいでしょう。
まとめ
割合で財産を譲る包括遺贈は、受け取る側からすると遺産分割協議への参加や借金の承継まで求められる、相続人に近い重い立場になるとされています。遺言を作成する際も、受け取る際も、権利だけでなく義務の面まで理解したうえで判断することが大切です。
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行政書士は、遺言書の文案作成、遺言執行者への就任、財産目録の作成支援を承っております。なお、包括受遺者と相続人との間で遺産分割協議がまとまらない場合の代理交渉は弁護士の業務、相続税の申告・2割加算の計算は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。
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