遺言書に遺言執行者が書かれていない…手続きはどう進める?|家庭裁判所での遺言執行者の選任申立て(民法1010条)と費用

遺言書に遺言執行者の指定がない場合の手続きの進め方と、家庭裁判所への遺言執行者の選任申立て(民法1010条)の流れ・費用を解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
遺言執行者が指定されていない、またはいなくなった場合は、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てることができるとされています

母が残した自筆の遺言書を家庭裁判所で検認してもらったものの、読み返してみると「遺言執行者」の記載がどこにもない――そんな状況で「この遺言は使えるのか」「誰が手続きをすればいいのか」と戸惑う方は少なくありません。柏市の行政書士だいち法務事務所にも、検認を終えた後のご家族から同じようなご相談が届きます。(参考例)遺言で、長年お世話になった姪に預金の一部を遺贈すると書かれていたものの、相続人の一人が手続きに協力してくれず、姪への引き渡しが止まってしまった、というケースは珍しくありません。今回は、遺言執行者がいないときの手続きの進め方と、家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらう「選任申立て」の流れ・費用を整理します。

この記事の結論

  • 遺言書に遺言執行者の指定がなくても、遺言そのものが無効になるわけではありません。内容によっては、相続人や財産を受け取る人が自分たちで手続きを進められるとされています。
  • 遺言による認知や相続人の廃除が含まれている場合、相続人以外の人への遺贈で相続人の協力が得られない場合などは、遺言執行者がいないと手続きが進めにくくなります。こうした場合、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てることができるとされています(民法1010条)。
  • 申立先は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、費用は遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が目安とされています。候補者を申立書に書くこともでき、家族や専門家を候補にすることが考えられます。

遺言の手続きが止まってしまったら、まずは状況の整理から

遺言執行者がいなくても、遺言は無効にならない

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、預金の解約や財産の引き渡しなどの手続きを担う人です。遺言で指定しておくのが一般的ですが、指定がないからといって遺言が無効になるわけではありません。

たとえば「自宅は長男に相続させる」「A銀行の預金は長女に相続させる」といった、相続人に財産を引き継がせる内容であれば、財産を受け取る相続人が自分で相続登記や預金の払戻しの手続きを進められる場合が多いとされています。ただし、金融機関によっては、遺言執行者がいない場合に相続人全員の同意書や印鑑証明書を求めることもあるとされ、実際の扱いは手続き先ごとに確認が必要です。

もうひとつ、遺言で指定された人が「なくなったとき」も、遺言執行者がいない状態になります。指定された人が遺言者より先に亡くなっていた場合や、就任を断った場合、解任・辞任によって欠けた場合などがこれにあたると考えられます。

遺言執行者を選んでもらったほうがよいケース

遺言の内容や家族の状況によっては、遺言執行者がいないと手続きが進まない、または非常に進めにくくなります。代表的なのは次のようなケースです。

  • 遺言で子を認知している:遺言による認知の届出は、遺言執行者が就任してから10日以内に行うことになっており、遺言執行者が欠かせないとされています(戸籍法64条)。
  • 遺言で相続人の廃除(または廃除の取消し)をしている:遺言執行者が家庭裁判所に廃除を請求する仕組みのため、やはり遺言執行者が必要です(民法893条)。
  • 相続人以外の人に遺贈している:遺言執行者がいない場合、遺贈を実行する義務は相続人全員が負うことになり、不動産の登記などで相続人全員の協力が必要になる場面があります。協力しない相続人がいると、手続きが止まりやすくなります。
  • 相続人が多い、遠方に住んでいる、関係が疎遠である:書類の取りまとめに時間がかかるため、窓口役を一本化する意味で遺言執行者を選んでもらう方法が考えられます。

遺言執行者には、遺言の内容を実現するための財産の管理や手続きを行う権限があり(民法1012条)、遺言執行者がいる場合、相続人は遺言の執行を妨げる行為ができないとされています(民法1013条)。手続きを確実に進めたい場面では、選任を検討する価値があると考えられます。

選任申立ての流れと費用・必要書類

民法1010条では、遺言執行者がないとき、またはなくなったときは、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任できると定められています。申立てのおおまかな内容は、次の表のとおりとされています。

項目 内容
申し立てできる人 相続人、遺贈を受けた人(受遺者)、亡くなった方の債権者などの利害関係人
申立先 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
費用 遺言書1通につき収入印紙800円、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごとに異なる)
主な必要書類 申立書、亡くなった方の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本、候補者の住民票または戸籍附票、遺言書の写しまたは検認調書謄本の写し、利害関係を示す資料(親族なら戸籍謄本など)

柏市にお住まいだった方の場合、申立先は千葉家庭裁判所松戸支部になると考えられます。なお、自宅などで保管されていた自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)は、選任申立ての前に家庭裁判所での検認が必要です。検認から一定期間内であれば、戸籍や遺言書の写しの提出を、家庭裁判所に残っている記録で代えられる場合があるとされています。

申立て後は、家庭裁判所から候補者に対して、就任の意思や経歴などを確認する照会が届き、回答書を返送します。そのうえで選任の審判が行われ、審判書が申立人と遺言執行者に送られる流れが一般的とされています。選ばれた遺言執行者は、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知し(民法1007条2項)、財産目録を作って相続人に交付することになります(民法1011条)。

候補者は誰にする?報酬はどうなる?

申立書には、遺言執行者の候補者を記載することができます。家族の誰かを候補にすることも、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家を候補にすることもできますが、未成年者と破産者は遺言執行者になれないとされています(民法1009条)。家庭裁判所は、候補者が遺言の内容や利害関係に照らして適任かどうかを判断して選任するため、候補者がそのまま選ばれるとは限りません。

家族を候補にする場合は、費用を抑えやすい反面、他の相続人との関係が悪いと手続きが進みにくくなることがあります。専門家を候補にする場合は報酬がかかりますが、中立な立場で書類を整え、相続人への通知や財産目録の作成を任せられる点がメリットと考えられます。

遺言執行者の報酬は、遺言に定めがなければ、家庭裁判所が相続財産の状況などを考慮して定めることができるとされています(民法1018条)。報酬や執行にかかった費用は、原則として相続財産の中から支払われます。選任後に揉めないよう、候補者を決める段階で、報酬の目安を相続人の間で共有しておくと安心です。

チェックリスト

  • ☐ 遺言書に遺言執行者の指定があるか、あらためて全文を読み返した。
  • ☐ 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認が済んでいる。
  • ☐ 遺言に、認知・相続人の廃除・相続人以外への遺贈が含まれていないか確認した。
  • ☐ 預金や不動産の手続き先が、遺言執行者なしで受け付けてくれるかを問い合わせた。
  • ☐ 申立先の家庭裁判所(亡くなった方の最後の住所地の管轄)を把握している。
  • ☐ 候補者を家族にするか専門家にするか、相続人の間で話し合った。
  • ☐ 収入印紙800円と郵便切手、戸籍・住民票などの必要書類をそろえた。

Q. 遺言執行者の指定がなければ、必ず選任を申し立てないといけませんか?

A. 必ずしも申し立てる必要はありません。相続人に財産を引き継がせる内容で、相続人の協力も得られるのであれば、遺言執行者がいなくても手続きを進められる場合が多いとされています。認知や廃除が含まれている場合や、協力が得られない場合に選任を検討するのが一般的です。

Q. 遺言で指定された遺言執行者が、すでに亡くなっていました。

A. 指定された人が遺言者より先に亡くなっていた場合は、遺言執行者が「なくなったとき」にあたり、利害関係人が家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることができると考えられます。遺言書に予備の遺言執行者が書かれていないかも、あわせて確認しておきましょう。

Q. 申立てから選任されるまで、どのくらいかかりますか?

A. 書類に不備がなく、候補者の回答がスムーズであれば、1か月前後が一つの目安と紹介されることがあります。ただし、家庭裁判所の状況や照会の内容によって前後するため、余裕をもって準備を始めることが大切と考えられます。

ワンポイントアドバイス: これから遺言を書く方は、遺言執行者を指定しておくことで、ご家族が選任申立てをする手間を省けます。指定した人が先に亡くなる場合に備えて、予備の遺言執行者もあわせて書いておくと安心です。柏市・松戸市・流山市・我孫子市を中心に、遺言書の文案づくりや、遺言執行者の就任後に必要となる財産目録・相続人への通知書の作成をお手伝いしています。

まとめ

遺言書に遺言執行者の指定がなくても、遺言そのものは有効で、内容によっては相続人などが自分たちで手続きを進められるとされています。一方、認知や相続人の廃除が含まれている場合や、相続人以外への遺贈で協力が得られない場合は、遺言執行者が欠かせない、または強く望ましい場面です。そのときは、相続人などの利害関係人が、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に、収入印紙800円と郵便切手を添えて選任を申し立てることができます。候補者と報酬の目安を相続人の間で共有したうえで、早めに準備を進めましょう。

遺言の内容をきちんと実現したい方は、柏市の相談室へ

行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、遺言書の文案作成、財産目録や遺産分割協議書の作成などを承っております。なお、家庭裁判所への申立書の作成・提出の代理は司法書士・弁護士、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続人間の交渉・訴訟は弁護士、相続税の申告は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

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