実家に住み続ける兄弟に、家賃を請求できる?|共有者の使用対価(民法249条2項)と親と同居していた場合の例外

相続した実家に住み続ける兄弟に家賃相当額を請求できるかについて、民法249条2項の共有者の使用対価と親と同居していた場合の例外を解説する柏市の行政書士だいち法務事務所のアイキャッチ画像 相続 遺言 不動産
持分を超えて使う共有者は使用の対価を償還する義務があるが、親と同居していた相続人は遺産分割までは無償とされることが多い

「父が亡くなってから、兄が実家に一人で住み続けています。私たち弟妹にも相続分があるのに、兄だけがタダで住んでいるのは不公平ではないでしょうか」。こうしたモヤモヤを抱えている方は、決して少なくないようです。こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。遺産分割が終わるまでの実家は、相続人全員の共有の状態にあります。今回は、共有の実家に住む相続人に対して家賃相当額を請求できるのかを、2023年4月施行の改正民法249条2項と、親と同居していた場合の判例の考え方から整理します。

この記事の結論

  • 共有の実家を使用する共有者は、別段の合意がない限り、ほかの共有者に対して自分の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うとされています(民法249条2項)。
  • ただし、亡くなった親と生前から同居していた相続人については、遺産分割が終わるまでは無償で住める合意(使用貸借)があったと推認されるとした最高裁の判例があり、この場合は家賃相当額の請求が認められにくいと考えられます。
  • 家賃相当額の請求や明け渡しを争うよりも、遺産分割で実家を誰が取得するかを決め、代償金や使用料の取り決めで公平を図るほうが、現実的な解決につながりやすいでしょう。

実家の使い方・分け方の話し合い、柏市の相談室が中立の立場で整理します

遺産分割前の実家は「相続人全員の共有」、住んでいる人を追い出せる?

親が亡くなると、遺産分割が終わるまでの間、実家の土地・建物は相続人全員が法定相続分に応じて共有している状態になると考えられています。そして、各共有者は共有物の全部について、持分に応じた使用をすることができるとされています(民法249条1項)。

つまり、実家に住んでいる兄も共有者の一人として、実家を使う権利を持っていることになります。判例でも、ほかの共有者は、共有物を使用している共有者に対して当然には明け渡しを求めることはできないとされています。「出て行ってほしい」と言っても、それだけで退去を強制できるわけではない点は、まず押さえておきたいところです。

では、住んでいない相続人は何も言えないのかというと、そうではありません。ここで関係してくるのが、2023年4月に施行された改正民法で新しく設けられた249条2項です。

民法249条2項、持分を超えて使う人は「使用の対価」を償還する義務

改正民法249条2項は、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、ほかの共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うと定めています。従来の判例の考え方を条文として明確にしたものとされています。あわせて3項では、共有物を使用する共有者は善良な管理者の注意をもって使用しなければならないとされました。

償還する対価の額は、その不動産を貸した場合の賃料相当額をもとに考えるのが一般的です。たとえば、相場の家賃が月10万円の実家を兄弟3人が3分の1ずつ共有し、兄が一人で住んでいる場合、ほかの2人はそれぞれ月約3.3万円(10万円×3分の1)を目安に請求を考える、というイメージです。実際には、住んでいる人が固定資産税や修繕費を負担しているかどうかなども考慮されるため、金額はあくまで個別の事情によって変わります。

なお、「別段の合意」がある場合はこのルールは当てはまりません。相続人の間で「遺産分割までは兄が無償で住んでよい」と話がまとまっていれば、後から対価を請求するのは難しくなると考えられます。

親と同居していた相続人は例外、遺産分割までは無償とされることが多い

実務上とくに重要なのが、亡くなった親と生前から一緒に暮らしていた相続人のケースです。最高裁平成8年12月17日判決は、相続人の一人が親の許しを得て遺産である建物で親と同居してきた場合、特段の事情がない限り、親が亡くなった時から遺産分割が終わるまでの間は、その相続人に無償で使用させる合意(使用貸借)があったと推認されるとしました。

このため、親と同居していた兄が亡くなった後もそのまま住み続けているケースでは、遺産分割が終わるまでの家賃相当額を請求することは、原則として認められにくいと考えられます。反対に、親が亡くなった後に空き家となった実家へ兄が引っ越してきたような場合は、この推認は働かず、249条2項にもとづく請求が問題となり得ます。

また、亡くなった方の配偶者が実家に住んでいた場合は、配偶者短期居住権(民法1037条)により、一定の期間は無償で住み続けられる仕組みも設けられています。誰が、いつから、どのような経緯で住んでいるかによって結論が大きく変わるため、まずは事実関係を整理することが大切です。

チェックリスト

  • ☐ 実家に住んでいる相続人が、親の生前から同居していたのか、亡くなった後に住み始めたのかを確認した。
  • ☐ 相続人の間で「無償で住んでよい」などの取り決めをしていないか振り返った。
  • ☐ 実家の相場の家賃と、各相続人の法定相続分を把握している。
  • ☐ 固定資産税や修繕費を、誰がどれだけ負担しているかを整理した。
  • ☐ 実家を誰が取得するか(代償分割・換価分割など)の選択肢を検討している。
  • ☐ 話し合いがまとまらない場合の遺産分割調停も視野に入れている。

Q. 住んでいる兄が固定資産税を払っている場合でも、使用の対価を請求できますか?

A. 固定資産税は本来、共有者が持分に応じて負担するものとされているため、兄が全額を支払っている場合は、その分を差し引いて考えるのが公平だと考えられます。請求額を検討する際は、税金や修繕費の負担状況も含めて整理しておきましょう。

Q. 遺産分割が終わった後も、兄が住み続けたらどうなりますか?

A. 遺産分割で実家を兄が取得すれば、兄が自分の家として住み続けることになります。ほかの相続人が取得した場合や、売却することが決まった場合は、兄の使用貸借は遺産分割の終了とともに終わると考えられるため、明け渡しや使用料について改めて話し合うことになります。

Q. 家賃相当額の請求は、自分で兄に伝えてもよいのですか?

A. ご自身で話し合いを持ちかけること自体は問題ありません。ただ、感情的な対立に発展しやすいテーマのため、相続人間の交渉や請求の代理が必要な場合は弁護士へ、遺産分割全体の整理や合意内容の書面化は行政書士へ、と役割を分けて相談するのがおすすめです。

ワンポイントアドバイス: 実家に住む相続人がいる場合、「家賃を払ってほしい」という話だけを切り出すと、こじれてしまうことが少なくありません。実家を住んでいる人が取得し、ほかの相続人には代償金を支払う「代償分割」など、遺産分割全体の中で公平を図る方法を一緒に検討すると、話し合いが前に進みやすくなります。不動産の実務経験のある相談室だからこそ、相場の考え方も含めて中立の立場で整理できます。

まとめ

遺産分割前の実家は相続人全員の共有となり、住んでいる相続人を当然に追い出すことはできません。一方で、改正民法249条2項により、持分を超えて使用する共有者は、別段の合意がない限り使用の対価を償還する義務を負うとされています。ただし、親と生前から同居していた相続人は、遺産分割までは無償で住める合意があったと推認されるため、請求は認められにくいのが実情です。誰がいつから住んでいるかを整理したうえで、遺産分割の中で公平な分け方を話し合っていきましょう。

実家をめぐる相続のお悩み、まずは柏市の相談室でお話をお聞かせください

行政書士は、相続人の調査(戸籍収集)、相続財産の調査のサポート、遺産分割協議書(代償分割の条項を含む)や共有不動産の使用に関する合意書の作成などを承っております。なお、使用の対価の請求や明け渡しをめぐる交渉・訴訟は弁護士、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の申告は税理士の業務となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

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